ラバー・ゲイジ
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こめかみの下でコール音がブッツリと途切れる。
電話口の向こうにいるプロシュートとラインが繋がったことに、ペッシは心底ほっとした。
ほっとしたのも束の間、話さねばならないことを順序だてて文章に組み立てることが出来るのかと焦り始めた。
『プロント』
「あ、兄貴、」
『ペッシか。何かあったか』
「 ………あの」
『なんだ?早くしろ』
急かされて益々頭の整理がつきにくくなったまま、まず自分が見たことをありのまま話すことにした。
「アメティスティーノで、人身売買シンジケートのトップが死にました」
『そんな事でイチイチ連絡してくるな』
「ひとりじゃあありません、ふたりも」
『オーバードーズか?えげつねェ事やってたらしいからな。他に用が無いなら切るぞ』
「待って下さいよ兄貴ッ!ふたりとも!!
───殺されたんです」
出てこない言葉に苛立って荒げかけた声を、ペッシは急速にひそめ直した。
いつにない剣幕を感じたのか、プロシュートが黙る。
「リーダーがわざわざロンバルディアの地方紙取り寄せていたんです。小さい記事でしたけど……キッチンのゴミ箱に捨てられてたのを読んで」
『それで?』
「ひとりはワイヤーで絞殺されて、SMの、縛られたみたいな格好で、アメティスティーノの外壁に吊されてました。もうひとりは…至近距離から撃たれていたそうで。……おそらく、デリンジャーだろうって」
『ふ……ン』
聞いているという意思表示の返事だけして、プロシュートはまた黙った。
キュルルッ、ゴウッと通話口に反響する強い風音だけが、虚しくペッシの耳に届く。
「現場で女が目撃されています」
頭の中で整理されてきた内容から、もう一つ付け加えた。
『……そうか。ほかの奴らには話したか?』
「いえ、まだで。兄貴、もしかして───」
『ペッシ、』
電話の向こうに強く吹いた風が、プロシュートの声を曇らせた。
『ほかの奴には黙っていろ。リゾットにも、だ』
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