ラバー・ゲイジ
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「私が死んだら、あなたと一緒にここに並ぶのよ。心臓を刺されても、頭を撃たれても」
茶色い皮膚をこびりつかせた骸、服だった布の上に崩れた白骨。
死体、死体、死体。
おびただしい数の骸骨を前に、夢を見ながら女が言った。
これが愛を誓い合った女の言葉なら、どれだけロマンチックだろう。
残念なことに、これはシチリアンマフィアの中枢を担う五十過ぎの女の言葉。
熱の隠る台詞と高い時計を、プロシュートの胸に押し付けた。
「グッチでドレスを仕立てさせたわ。あなたは私の隣、同じグッチのスーツで並ぶの」
お互いが、組織同士の均衡を保つツールだった。
いわば外交。
きっかけは忘れたが、この女に気に入られてシチリアへ足を運ぶようになって随分になる。
この歳になるまで、この女が何人を手に掛けてきたのかは解らない。
だが、その眼はヒトをコロし続けた者が持つ独特の暗い色をしていた。
その暗い眼が、プロシュートと向かい合う間だけ、熟れきった情欲を露わにする。
組織に一生を捧げた哀れな女が見る夢を、誰が止められるものか。
どんなに自己欲で固められていようと。
どんなに歪んでいようと。
───また色呆けの相手かと思うとウンザリだが、気になることもあった。
「ロザリア、ね…」
シガーケースから一本を取り上げると『ロメオ・Y・ジュリエッタ』は丁度残り二本になる。
黒い海を滑る風に、規則的な電子音が混じった。
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