蜜色の空
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先程までリゾットが悠然と足を組んでいた革張りの一人掛けソファに、ペッシは頭を垂れて座った。
丸まった背に圧迫された胃はまだムカムカと伸縮して、自分の呼気にも吐き気を覚えた。
あちらで、リゾットが血液と嘔吐物に水を流している。
透明に赤いマーブルを描いた水が端へ端へ、鉄枠の穴へと自分の反吐を押していくのを胡乱な表情で見た。
「ペッシ、ペッシ、ペッシ、なぁ。ただカネ使い込んだくらいでリゾットやプロシュートがヒトゴロシすると思う?」
すぐ側へかしずくように膝を折ったメローネが、ペッシの飛び出した耳にそうっと囁いた。
「あのオッサン、もともとはホームレスだったんだぜ。『社長役にスカウト』したんだ、衣食住と引き換えに」
逆立った髪を潰すようにワシャワシャと撫でながら、メローネは膝にノートパソコンを乗せ、開いて見せた。
ペッシにはなにがどうだか解らない数字が、枠にくくられてズラリと並んでいる。
ドルに換算したら莫大な額だというのは、解る。
メローネは片手でカタカタとページを送り、何枚めかで手を止めてトントンと何カ所かを指差した。
「ここと、……これくらいかな。全部、クスリにつぎ込んじまったんだ」
「でも、子供だって居……」
撫ぜられすぎてぺしゃんこになった髪をメローネが鷲掴み、俯いた顔を引っ張り上げた。
恐ろしく乱暴だったが、メローネは幸せそうにとろけた笑顔だった。
「そのガキが朝から晩までピースマークのピンバッチ売り歩いたカネも、ぜーんぶクダラナイ粉になっちゃったんだよ」
スリープしかけた画面に一瞬、顔中打撲で青黒く腫れ上がった子供が倒れている画像が写った。
それと認識するには短すぎる一瞬。
メローネの手がパタリと画面を閉じ、残酷なシーンはただの幻想であったかのように見えなくしてしまった。
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