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「ボンジョルノ!遅くなったわね」
カタンと音を立てた跳ね戸の方に目をやると、息を切らしたアニカがペッシに向かって片手を上げた。
ユラユラ揺れるアメリカ産ビールの看板の前、流行を先取りした色のコートを脱ぐ。
腰がぐっとくびれ、胸元が深く切れ込まれた赤いワンピース。いつもは首のうしろで括られるだけの髪が、ぐるんと捻りあげられて留められていた。
アニカはペッシの隣の席にストンと腰掛け、まずは跳ね戸の看板のアメリカ産ビールを一杯オーダーする。
「ChinChin!」
少し乱暴にぶつからせたグラスのフチに泡がぐらりとゆれて指に流れ、アニカもペッシも笑いながら口をつけた。
アニカは酒のにおいの吐息で、いつもと変わらないことをいつもよりゆっくりとペッシに喋る。
酔ったせいか、照明のせいなのか。
隣に座っているせいで、あのクセのある香水がいつもより近く香るのがそうさせるのか。
快活なイメージの彼女が、今日はそこはかとない色気を感じさせていた。
ちょっぴり心ここにあらずで、ペッシはさっきから「はい、はい」と生返事を返している。
と、2杯目のベルガモットをオーダーしたアニカが唐突に切り出した。
「ねぇマンモーネ。大人になりたい?」
「はい。は…───いィイ!?」
裏返った生返事は空のグラスの中に反響し、ナッツ瓶に伸ばた手からピーナッツが転がって落ちた。
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