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ポインセチアとクリスマスローズの季節は終わり、店の花はいつのまにかガーベラとスイートピーへ。
薔薇とカスミソウがピークを迎えて、次は向日葵。
通りに植わったマロニエの葉が寂しげな色へ移り変わり、それを散らかしはじめる。
店先の花々がクルクル色を替えながら季節を巡らすうちに、2人が向かい合ってバールにいる回数は積み重なり、その時間は少しずつ長くなってく。
さすがの聞き上手、ペッシの巧みな相づちをすっかり気に入ったのか、アニカはたびたびペッシを呼び出した。
───そうして今日、ペッシはあらためてアニカに呼び出されている。
「たまにはお酒にも付き合ってよ。明日なんてどう?」
有無は言わせないという迫力に、断らねばならない理由もなかったペッシは、いつものように「はい」と答えた。
いつもコーヒーを飲むバールではなく、花屋からは少し離れた場所。
入り口の跳ね戸がアメリカ産ビールの木製看板のリサイクルで、古ぼけたピンボールとスロットの台が隅に置かれているバール。
身をよじる青いネオンの文字が、カウンターの向こうで目障りにまたたいていた。
『待ち合わせには10分前までに着く』
プロシュートの呼び出しに遅れてこっぴどく叱られて以来身についた習性で、ペッシはアニカより先にスツールへと腰掛けている。
腰掛けていたが、『腰を落ち着けた』状態とは程遠い緊張を感じていた。
隣の椅子でウトウトしている猫をどこかで見た柄だと思って眺めてはみたが、やっぱりちっとも落ち着かない。
プロシュートも認めるペッシの鋭い感性は、小さな変化が漂わせる『良からぬ気配』をピリピリと受信していた。
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