…ドミノ
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いつも誰かしらが座って、詰まらない雑誌だのビデオだのを眺めるアジトの古いソファ。
ナナシは低い肘掛けに頭をもたせ、少しばかり開かれた唇からちらりと白い前歯が覗いているが、それはピクリとも動かずに乾きこわばっていた。
硝子で出来た青い百合が乗った胸の膨らみの下、みぞおちのあたりに細い手が大人しく乗せられている。
しかしその顔や唇や手は白磁器のように冷たく色を失い、そこにあるのは、ただ出来損ないの蝋人形のような静寂であった。
「……ホルマジオ。オレら全員じゅうぶん驚いたから、くだらねぇ冗談は止めさせろ」
「はは、冗談?そうだな。冗談。……だろ」
口火を切ったギアッチョに、ホルマジオはガタつく顎を押さえつけながら何とか絞り出した。
ペッシもイルーゾォも、頭の天辺から突き立った太い支柱が足の真下で固定されているかのように、血の気の失せた顔のまま微動だにしない。
プロシュートは背を向けてダイニングチェアにかけ、うなだれた額を組んだ手に乗せたままで口を開かない。
もはや自らの意志では顔にかかった髪いっぽん退けることができない、呼吸も血色も心拍も失った躯を前に、皆ただただ放心していた。
ただそこに冷たく横たわる、魂の器。
7人の長い長い薄弱とした緊張は、ペッシが鼻をすすりだすまで続いた。
皆の後ろにいたリゾットが、棒立ちのイルーゾォを押しのけて進み出る。
「触るな!」
それまで空虚な瞳で一点を捉え、糸の切れた操り人形のようにダイニングの椅子でうなだれていたメローネが、ナナシの亡骸に飛びかかった。
椅子がひどい音をたてて床に倒れ、固い体は衝撃にユサリと乾いた髪を揺らす。
「触るなよ!触らないで……」
「メローネ」
「こんなナナシ見るな!見ないでやってくれよ!触らないでくれよ!頼む……」
震えながら首を抱え持つメローネの向こうで、白々しくマニキュアの塗られた青白い手がズルリと滑り、テーブルに音を立ててぶつかった。
「オレが、オレが全部やるからさ……頼む、よ…」
今度は、脱け殻を抱いて震えるメローネを、皆が放心したまま見下ろした。
───やがて、じっと目を閉じたリゾットが皆を外へと促した。
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