ウラガワ
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それが今、隣にいる暗殺チームのリーダーは、頭の天辺から爪先まで隙のない『紳士』を演じている。
あまりのギャップにわざとらしさを感じるが、それでもリゾットの纏う大人の男の色香に、ナナシはついぐらりとキてしまいそうだった。
「いったい、何を考えているんです?」
「照明が落ちでもしてくれたら、暗い空き部屋に連れ込めるんだが……と、その手段についての画策だ」
逃げ出してしまいたい気持ちを押し殺し、ようやく口に出した講義さえ妙な冗談でかわされる。
ナナシは組まれたままの肘でリゾットの脇腹をぐりっと小突いた。
超がつくほど合理的に抜かりなく、機械的に物事を考えて処理するチームリーダーが、どんな顔で何を言っているのか。
想像もしたくないと、ナナシは正面を向いたままで体を硬くしていた。
組まれた腕から張り詰めた緊張が伝わり、リゾットは横目にナナシの様子を窺う。
「もう少し自然に振る舞えないか?」
ナナシは唇だけで微笑みを作り、目だけで精一杯睨んでやった。
視線の合ったリゾットはいつも通り唇を引き結んだまま、目だけをすっと細めてみせる。
まばらに人が集まりだしたフロアの照明が、少し暗くなった。
時計の針は招待状に記されたのと同じ時間を指し、アンティークの絡繰りと錆びたオルゴール板で一曲奏でて静まる。
「さ、任務の時間ですから冗談はお終い、エスコートありがとうございました。───照明、落ちるといいですね」
印度更紗の裾が、白いパンツを掠めてフロアの中心へ躍り出た。
なれた仕草でカジノオーナーに抱きつき、キスをして腕を組む。
スプマンテを取り上げて唇をつけるナナシから視線をずらしてフロアを見渡し、最終的にリゾットの目は天井を仰ぎ見る形で止まった。
そして『手頃な』送電コードが剥き出しでぶら下がっているのを、眺めた。
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