ウラガワ
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「ひとり始末したくらいでスイートなんか取ったのか?」
ギアッチョのポケットにねじり込まれていた紙切れを抜き取ったリゾットは、プリントされているホテルの名前と安くない金額に目を落とした。
フランス語の偽名は、隠しきれないギアッチョの癖字で綴られている。
「ベッドルームがふたつあるのがそこだけだったんだよクソ。ひとつ空いてたシングルで添い寝してやってもよかったんだぜ」
ギアッチョはリゾットの指が摘んだ領収書をぱっと凍りつかせた。
薄い氷をまとったそれを、液体窒素でパリパリになった薔薇の花よろしく握りつぶして粉々にする。
「証拠隠滅を謀るなら、もっと早くやっておくんだな」
「……」
「ついでに、主寝室と副室が別れてるのはエグゼクティブスイートだけだ」
「ウルセェ」
ギアッチョにもリゾットにも、張り合うつもりや遣り合うつもりはない。
だいいち、肝心のナナシは今頃イルーゾォの腕の中で完全に落ちている。
二週間共に行動させたうえの一晩を追求したところで、求める答えをナナシが吐くとは思えない。
リゾットは労いの意味を込め、拳の裏側でトンとギアッチョの肩を叩いた。
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