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時間は医者なのだそうだ。
痛みと悲しみを癒やす偉大な医者なのだと、遠い昔に誰かが言った。
許しすぎた時間は、ついに俺の中の苦痛と快楽を完璧に溶け合わせていた。
「何が医者だ、このアサッシーノ(ヤブ医者)」
不規則な声をかすかにあげるだけで俺に揺すられているナナシは、つい口にした言葉には無反応だった。
もう眠っているのかも知れない。
ほぼ反応のなくなった中で終わり、繋がったまま、まだ息が整わないうちにケータイを取った。
『───プロント。何かあったか』
出なけりゃいいのに、こんな時に限って電波の飛んだ先と1コールで世界が繋がる。
「帰ってくんなよ」
『はぁ?』
「何でもねぇ。お疲れ」
一方的に始まって自分勝手にぷつりと切った会話を、ナナシは聞いていたかも知れない。
ヤツが帰って来なかったところで、自分がナナシをどうにか出来るとは到底思えなかった。
帰ってきたところで、そいつがどうにかするとも考え難い。
倒錯を引き起こせばいい。この行為でずっと繋ぎ留めていられたらいい。
それすら出来ない俺は。
いや、変化が現在を打ち壊してしまうくらいなら、それを望まないだけだ。
「卑怯者。
…俺がね」
もっともらしい理屈と言い訳とで塗り固めた心臓の音が五月蝿い。
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