ナイフのはなし
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ソルベとジェラートが任務を終え、いつもなら自分たちのアパルトに直帰するだろう彼らが珍しくアジトに戻ってきた。
疲れているであろう二人に食事をと、マッシュポテトをソイミルクでトロトロにして、豆とナスを入れたグラタンを作ってやる。
「……さすがに寝ちゃったかな?」
手早く準備を終えたつもりだったが、二人は仮眠室へと消えていた。
完全防音のそこから音が漏れることはないが、微かな振動も伝わってこない壁にしばらく耳をつけ、彼女は諦めた。
「───…ッ」
二日もろくに食事を取っておらずシャワーも浴びていなかったが、そんなことに構う余裕はなかった。
声ひとつ上げずに裸で抱き合い、絡み合う。
二人とも口にナイフをくわえ、皮膚を引き切るギリギリまで顔をよせ、汗臭い体をまさぐる。
声をあげることなど、そもそも出来ない。
喉元ギリギリに寄った刃に、ジェラートは頭を反らした。
「ゥ…」
二人とも、ナイフをキリリと噛んだその口の隙間からフゥフゥと犬のような荒い息をつき、重い体を預けながらも冷たい刃に遮られるギリギリのプレイを味わう。
「……も、無理」
ナイフを枕の脇に吐き出したソルベが、ジェラートの口からナイフを取り上げて投げ捨てた。
頭蓋骨がミシミシと音をたてるほど頭を抱きあって、ぐちゃぐちゃになりながら舌を絡める。
ガツ、と当たったジェラートの八重歯がソルベの唇を切った。
完全菜食主義の二人の口の中で血が混じり合う。
「肉の味も血の味もとっくに忘れたけど、ソルベの血はあまくて大好きだ」
「ジェラートの肉も、すげぇ美味い」
知らず切れてしまっていた数カ所を舐めあい、薄暗くヤニ臭い仮眠室のベッドで二人は果てた。
「腹、へった」
「俺も」
抱き合ったまま呟いたソルベもジェラートも、どっと襲ってきた睡魔には勝てずそのまま眠りに落ちていく。
キッチンカウンターの上のグラタンが、腹を空かせた肉食の男たちの標的になっていることなど、知るよしもないまま。
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