ナイフのはなし
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こんな男所帯の住処では、普段プリモだアンティパストだセコンドだと言わない。
どん、と大皿に盛った肉か魚料理か。戸棚に釣り下げてある魚の薫製の切り身か。
それに、スパゲティ。
そんなアジトでも、いつのまにかキッチン番になってしまった2人はたまに凝った料理を作る。
主にペッシが、プロシュートのために。
「あっれぇえ、魚釣りに行ったんじゃあなかったっけ?」
釣り道具一式と空バケツ、買い物袋を抱えて帰ってきたペッシを彼女は面白そうに茶化した。
いかつい体格のパイナップル頭はそっぽを向いて、子供のようにブッスゥとむくれる。
「あーあー、イタリアの水質汚染の問題は深刻だなー!きっと生態系がおかしくなって、魚がいなくなったんだ」
キッチンに入りながらもっともらしく、彼女に聞こえるように盛大に嘆くペッシについ吹き出してしまった。
「そうね、そんな川で必死に生きてる魚を釣って食べるなんて、とんでもないことだわ!」
クスクスと笑いをこみ上げさせながら、空になってしまったグラタン皿を回収して買い出し品の整理を手伝う。
「ねぇペッシ」
「何だよ」
小馬鹿にされてムスリときているペッシはキッチンナイフでスッスッと洋ナシの皮を剥き、これ以上何かあるかと口をとんがらせた。
そこに、ヒールの上でさらに爪先立ちした彼女がそうっと耳うちする。
「プロシュート、今日は魚じゃあなくてお肉が食べたいってさ」
何か難しい顔をしていたペッシはほぅっと赤くなって、今度はレバーペーストの蓋とクラッカーの袋を開けた。
「……何にしよう?」
「さぁ。それはペッシが一番知っているでしょう?」
それだけ言い、彼女はホルマジオやメローネにも手伝わせようと、バターナイフやスプーン、カッテージチーズにカットした洋ナシをテーブルへと運ぶ。
「これから
いつも夕食をとる時間まであと2時間。
彼女が作った何か美味しそうなものを皆がつついていたみたいだから、少しくらい遅くなっても大丈夫そうだ。
何とかいけるかもしれないと、ペッシは冷凍肉の塊を取り出した。
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