ステレオ コミック
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「おー、どっか出掛けんのか?」
アパルトの階段でホルマジオとすれ違う。
口の前で人差し指をバツに交差させ、コクコクと頷くと「また何かやらかしたか?」と突っ込まれた。
これだからホルマジオは話が早くていい。
「ま、頑張れよ?」
ニヤリと笑ったホルマジオが、階段の上から投げキスをする。
親指を立ててから投げキスを返し、ひらひらと手を振って別れた。
古書店の前、気の弱そうなソバカスの少年が本を眺めていた。
私の方を見て「あの、」と声をかけ、
頬に、キスをする。
「じ、じゃあ!!」
真っ赤になった少年は、そのまま走り去ってしまった。
ナンパ!?
いや、ちょっとかわいいけど、えぇ?
てか、逃げちゃったし!
声をかけることも出来ずにポカンとしていると、通りからパ───とクラクションが聞こえた。
自分に向けてではないと思って放置していたら、見慣れた車が横付けされる。
「何ボーっとしてんだよ。乗ってくか?」
ウィンドウから身を乗り出すギアッチョの声に、我に返った。
答えることが出来ないので、とりあえず笑って首を横に振る。
手招きをするので一歩近付くと、ギアッチョが手を伸ばし、
後頭部を掴まれ、キスをされた。
後ろから、別の車のクラクションが響く。
「あーもう、うるせぇな!」
そう言いながらも、急いでいたのかギアッチョは車を発進させた。
口を抑えて立ち尽くす私を、通りの向こうからピッツェリアの主人がニヤニヤと見ている。
『誤解しないでくださいね!ちょっと罰ゲーム中なんです』そう書いて突きつけてやろうと道を横切る。
と、そこには見慣れた白いスーツ。
『ブチャラティ、』声をかけようとして開いた口を、ゆっくり閉じて息を吐いた。
トントンと肩を叩いて、振り向いた彼に笑ってみる。
口の前でバツを作れば、ポケットからペンと手帳を出してくれた。
『罰ゲーム中で喋っちゃいけないの。ピッツァ買ってくるから同席してもいい?』
にっこりと笑ったブチャラティは、ペンを取って『もちろん』と書き込んだ。
やっぱり、なかなか素敵じゃない?こういうのも。
破ってくれたページに『マルゲリータとオレンジジュース。さっきのは誤解しないでくださいね!』書き込んで主人に渡す。
ピッツァを持って席に着くと、ブチャラティがどうも落ち着かない様子でちらちらとこちらを見る。
オリーブオイルで手がベタベタになる前にと、ペンを取って『どうかした?』と書き込んだ。
身を乗り出した私に、
ブチャラティがそっとキスをした。
「え、」
───しまった。
真っ赤な顔を片手で覆ったブチャラティが立ち上がり、私の後ろに回る。
「これは、君が生まれた国の風習か何か?」
べりと剥がされた紙には。
鳴りだしたケータイに思い切り文句を言ってやりたかったけれど、とりあえず私もブチャラティも赤い顔を抑えて俯くしかなかった。
おせっかいやきのピッツェリアの主人が、豪快に笑っている。
足元で、迷惑な紙が細かい正方形にパラパラと崩れて無くなった。
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