ドライバー!
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気がつけば20分近く、海岸へと向かう道をひたすら走った。
頭の中は真っ白で、とにかくアクセルを踏み込むことだけ、ハンドルを握りしめることだけに集中して。
白波だった真っ青中海が広がる。
目の前に迫るガードレール、『行き止まり』の文字とその先の崖に、僕は腹をくくった 。
「左へカーブします!一気に切りますよ!?」
「D'accordo!」
力いっぱい踏みつけたブレーキと、車体が回転するほどの急ハンドルと、振り落とされるような遠心力の中。
彼女は追ってきた車の右前輪を見事に撃ち抜いていた。
バランスを失い、しかしスピードを保ったままの黒い車がガードレールを突き破る。
青い空から海へ、重たいはずの車体が跳ね上がった。
盛大にあがる水柱、自分の目の前にも迫ったガードレール。
思わずハンドルにしがみつき、ギュッと目をつぶった。
───考えていたような衝撃は、無かった。
恐る恐る、ハンドルから顔をあげる。
「ッはぁ───」
大きく息をつき、シートに沈み込んだ。
バックミラーを見てみれば、さらに半回転したらしい車のテールランプギリギリにガードレールが迫っている。
「あ、ごめんなさい」
「……ごめんなさいって」
グッタリした僕に、あれだけのことをした張本人はケロッとしていた。
「まだ行き先を言っていなかったわね」
僕は今更ハンドルに頭を打ちつけ、パ───と長いクラクションが鳴り響いた。
───まで行ってくれるかしら?……ねぇ聞いてる?タクシードライバー」
「聞いてます……あなたとだったら過去以外どこへだって行けそうな気がします」
「じゃ、アナタの未来までお願いしてみようかしら」
デリンジャーの銃身を触ってしまった彼女が「アチッ」と悲鳴をあげて手をばたつかせる。
僕は、金輪際あの駅前でカモを探すのはやめにしようと心に決めた。
「やっぱり、こんなじゃじゃ馬は御免ですよ」
───この時はまだ、『僕の未来』にあなたを招待することになるなんて、思いもしなかったんですけどね。
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