ドライバー!
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たまには普通に人を乗せることだってある。
───いや、不可抗力で。
いつも通り、カモになりそうな旅行客を探しながら駅の前に車を停めていた時だった。
ここはうっとおしいオマワリがウロついてないから、ショバ代もなくていい。
そのくせどこかの国のテレビやガイドブックで大々的に紹介されているものだから『客』には事欠かないし、訳知り顔のイタリア人はまず僕に声なんかかけない。
───はずだったのに。
バン!
「メーターの倍額払うわ。すぐ出して」
綺麗な人だとは思ったが、勝手に車に乗り込むのはいかがなものか。
しかも、なぜ助手席に?
「僕は普通の客なんか取っちゃあいないんですよ。この意味、解りますよね?」
「解ってて言ってるのよ。無駄口たたいてる暇があったら早く出して」
無駄口。これは無駄口か?
僕はイラッとして乱暴にドアを閉め、無言で車を出す。適当に走ってぼったくり料金ふっかけて、叩き出してやれ。
そんな僕の思惑に気付いていないのか、彼女は『怯え』というより『ウンザリ』といった風に大きく息を吐き出しながら後ろを振り返った。
「一体どういうつもりで…」
彼女の方を睨みつけた僕が見たものは。
形の良い尻。
と、上半身をめいっぱい窓の外に乗り出して、デリンジャーを構える彼女の姿。
「!!ちょ、何してるんですか!」
バックミラーを見ると、物凄いスピードで黒い車が追って来ていた。
『追われている』と思った瞬間、僕の体は条件反射でアクセルをグンと踏み込む。
それを合図にしたように
彼女は
その手の小さな銃を
ためらいもなく
ブッ放した。
2発、弾を込めなおして───3発、4発!
それはまるでアメリカンロードムービーのワンシーン。
狂ったように蛇行しながらもスピードを落とさず追ってくる黒い車、古い石畳を切り裂くカーチェイス。
ヤバい事に巻き込まれた、と思ったときには遅かったんだ。
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