『リアリストとエピキュリアン』
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条件は二つ。
「食事の用意をする」
「二人に干渉しない」
他に細かい事は必要な時に頼むし、どちらかに頼んでもいい。解らないことがあれば何でも聞けばいい。
彼らの生活に馴染むことは、これからの自分の生活を安全なものにするために絶対不可欠であった。
そのため、ナナシはここ数日で消耗しきった神経を研ぎ澄まし、部屋の細部まで観察する。
徐々に気づく矛盾点。
例えば、冷蔵庫、食材の棚。
卵、肉、魚、それらに関わる缶詰めや調味料がまるでない。
『特定のアレルギー』であれば、代用できるウサギ肉やサプリメントをとる場合がほとんどだが、それがない。
ここまではいい。
『人は殺しても動物愛護の精神が云々のビーガン』それで済む。
……はずが、ソルベが履いているのはレザーパンツであったし、ジェラートが大切にしているのはショットのレザージャケット。
それらを手入れするための、ミンクオイルとセーム皮。
ナナシの思考は一度そこで行き詰まる。
達した結論は『ストイコ(禁欲思考者)』。
きっとプレゼントか何かで貰ったものを大切にしているんだろう、と思うことにした。
……翌日、二人のセックスに出くわす。
さして驚きもしなかったが、ナナシはまた考える。
禁欲じゃあない。かといって欲望のままに何かしているわけではない。
さらに二日間考えて、ナナシは一つの質問をした。
「あなた達は、何?」
その質問の意味を理解したソルベとジェラートは、初めてナナシを正面から見た。
「「エピキュリアン(快楽主義者)かな」」
ナナシはこの部屋にきて初めて笑い、それを見てソルベがニヤリとした。
「これで笑ったのは二人目だな」
「一人目はメローネだけどね」
ナナシが瞬時に嫌な顔をしたのをみて、二人が楽しそうに笑った。
「「ナナシ、」」
二人が初めて名前を呼んで、それぞれが手を差し出した。
二人に挟まれて頭を撫でられながら眠ってしまったナナシが次に目を覚ましたのはベッドの上、やっぱり二人に挟まれていた。
20081101