クラフトワーカー(セカンズ)
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「サッカーは見ないの?」
米国出身の男が住む部屋に非難を果たし、
ナナシは恐る恐る聞いた。
彼は興味が無いらしい。国自体が、あまりサッカーには力を入れていないのだそうだ。
「ベースボールの方が面白いぜ?」
キャラメルの味のポップコーンをすすめてくれたので、
ナナシは彼にならってコーラとともに口へと運ぶ。
代わり映えしない野生動物のドキュメンタリーより、いちいちオーバーリアクションをする彼を観察するほうがよっぽど面白い。
「コメディは?」
「微妙なニュアンスが解らなくて、笑いどころ逃すと悔しいから見ない」
解説しようか?なんて言った
ナナシに、彼は「それも微妙だな」と苦笑いした。
中継が終わったのを確認して2人のもとへ戻ると。
―――部屋が暗かった。
イングランドの勝利で試合は決着し、電気を叩き割ってしまった暗い部屋で2人粛々と泣いていたのだ。
天井からぶら下がる外れた電気のカバーやあちこちで割れているガラスが、陽気なビスケットのCMを映し出すテレビの光に浮かび上がる。
抱き合って泣く2人をベッドルームに押し入れ、チャカチャカと色を変えるテレビの明かりを頼りに朝までかかって部屋を片付けた。
ちなみに瓶を蹴り返した脛の痣は青紫色になり、さらに翌日気味悪い色がピークに達し、かなり時間をかけてやっと消えた。
彼らの部屋に滞在している期間がシーズンだったこともあり、試合のたびに
ナナシは一階のアメリカ人の部屋へ避難するはめになる。
ちなみに、勝ったら勝ったでそれもまた大騒ぎ。
部屋に戻るのを待ちかまえていた2人に両サイドから腕を掴まれ、そのままバールへと連行されて寝かせてもらえない。
街に溢れた熱狂的なファンは、真夜中だというのに「イタリア最高ー!!」と奇声を上げ、けたたましいクラクションを鳴らす。
サッカーなどどうでもいい人種は、深夜の騒音に眠ることも適わず窓から外を眺めている。
そんな一夜が明けて翌日帰ってみると、部屋の荒れようは負けたとき以上。
ナナシは試合のたびに、それこそフルでゲームを終えたサッカー選手のようにクタクタになる。
「オメーも行くだろ?」
「行かない。絶ッ対」
がっしりとホルマジオの腕が肩に巻きつき、楽しげな顔が間近にのぞき込んでくる。
しかし『サッカー』というキーワードが嫌な回想にしか結びつかない
ナナシは、しかめっ面で首を横に振った。
「キャラメル味のポップコーンでも食べて待ってるわ」
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