クラフトワーカー(セカンズ)
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イタリアの男というのは、なぜこうもバカみたいにサッカーが好きなのか。
6月、ついたち。
「オレ、末の金曜から火曜は休暇」
アジトに入ってくるなり、ギアッチョは「チャオ」も挟まず一方的に告げた。
「オレも」
「俺も」
「俺とペッシもだ」
「あっ!ならオレも!」
リゾットが次の仕事の指示を与える間を与えず、ホルマジオとプロシュートとイルーゾォが付け加え、さらにメローネが便乗する。
「…フィレンツェか?」
「「「Exactly」」」
皆、申し合わせたように手を胸に当てて頭を下げた。
ナナシがアジトに置いていたジャッポーネのマンガを読んでいたらしい。
「何がイグザクトリーだ」
さすがに参ったというように、リゾットは額に指先を当てる。
また7月も半ばを過ぎればバカンスシーズン到来で仕事がなくなるのに。
「ソルベとジェラートは?」
人数分のハイネケンを冷蔵庫から取り出しながら、
ナナシがキッチンから口を挟む。
ペッシに4本渡して、カウンターからギアッチョに煙草を一箱投げた。
「あいつらの休暇届けが一番先だった」
「…さすが」
あの2人とサッカー観戦した夜を
ナナシは忘れていなかった。
いや、忘れたかった。
むしろ、忘れようがないのであった。
―――イングランド対イタリアの中継日。
その日2人は、まだ試合開始まで1時間もあるというのにテレビの前のカウチにスタンバイしていた。
試合開始と同時に開けたレーベンブロイの瓶が空にならないうちに得点され、普段はおとなしいものだとばかり思っていたソルベとジェラートが。
瞬時にフーリガンと化した。
フーリガン、は。
サッカーなんかをダシに暴れる『集団』を指すのだろうが、2人は集団なんかじゃあなくっても十分に、十二分にフーリガンだった。
「ゥオォオアァァイングランドォオォ※×@$××××!!」
「そっ…ソルベ!?」
「何やってんだイタリアーノォオォオ#☆¥※×*×××!!」
「ジェ、ラート!?ちょ、 どう「「ウルセエェエァアァ!」」
ソルベがカウチをバァンとひっくり返し、ジェラートがレーベンブロイの瓶を投げつけた。
方向が定まらず飛んできた瓶を反射的に蹴り返すと、泡立つ酒がガラスと一緒になって壁ではぜる。
「ッい~~!!」
自業自得だが、向こう脛を堅い瓶に思い切りぶつけたものだから、さすがに
ナナシは涙目でしゃがみこむ。
黙った
ナナシに2人の怒りは向かなくなり、テレビに向かって喧々囂々吼えていた。
這うように逃げ出した
ナナシは、1階でたった3室しか使われていない部屋のドアのひとつをノックする。
「…どうしたよ?あー、えーと…ま、入れば?」
ぐしゃぐしゃの頭に、ビールの匂い漂うビショビショの足。微妙な表情で困り果てているらしい深夜の訪問者を、困惑しながらも部屋へと入れてくれた。
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