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それから何年か、二人は生活を共にし、『少女』は『女性』となった。
そのあいだにルチアーノの『仕事』を知り、少しずつ理解していった。
時々、ルチアーノは酒瓶を壁に叩きつけることがあった。
テーブルの上をめちゃくちゃにすることもあった。
最近出掛けて帰ってきては、そうすることが多くなった。
自分の知らないところで何か沢山のことを抱えているのを、彼女は肌で感じ取っていた。
それでも、夜になればルチアーノは彼女を抱きしめて眠った。
彼女も、ルチアーノに寄り添って眠った。
やがてルチアーノの属する絶対権力は、すでに重要な地位にあった彼に一つの指示を下す。
彼自身、ずいぶん騒がしくなってきた生活から離れて暮らすのは悪くないと思えた。
これ以上彼女の存在を隠していくことも出来そうにない。
快適で静かな暮らしを送るため、ルチアーノは一人の男に連絡を取った。
それは彼が知る限り、暗い瞳をした残忍な男。『死神』とさえ呼ばれていた。
実際は芯からの信用などしていない。
ただ、年端も行かないチンピラに彼女を任せる気になれなかっただけだった。
「あとは勝手に……生きてみろ」
これからの楽しみは、名画を飽きるまで眺めることと、旨いものを食べることくらいしか無いかも知れない。
だいいち出ようと思えば、いつだって出てこられる。
それでもルチアーノは、二度と戻らないつもりで部屋のドアを開けた。
ドアを閉める音が、どうか彼女を起こさないように。
様々なことに手を汚した男のささやかな願いを、天の神は快く受け入れてくれた。
『パッショーネ幹部、ルチアーノ・ポルポ。───罪で───年の投獄』
そんなニュースを知ることがないまま、彼女は一枚の紙切れを握りしめた。
死神とよばれる男の電話番号を、握りしめた。
TO BE CONTINUED→ファウスト
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