…イントロダクション
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「今日、私の誕生日だったかもしれない」
そう言った少女に、ルチアーノは優しく笑いかけた。
「そういう事は早くいいなさい」
その晩、彼がさり気なく空けたワインはナターレに飲んだのと同じ、グレードの高いものだった。
今思い出せば『異常』だったと思える施設で迎えたどの誕生日より、温かく幸せな気持ちが涙を溢れさせた。
何の凹凸も無かった干からびたような体は、美食家のルチアーノのお陰で健康的になっていた。
あの一週間ほど後、縫ってあった糸を切って抜き取った傷も、いつの間にかきれいになくなった。
その体に在るべき摂理を教えるのは、この一年で湧いた情に少し心が痛んだ。
小さくて、しかし重要なものを失ったはずなのに、その意味の本質を理解しているのかいないのか、少女はただじっとその事実を受け入れた。
「一週間、何の連絡も無く私が帰らなかったら、死んだと思え」
朝方の夜具の上で呟いた言葉に対する答えは無かった。
ただ、しがみついた腕はまだ肉の付きが足らず、心地のよいものではなかった。
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