…イントロダクション
名前変換
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名前もなく金の価値すら知らなかった少女に、ルチアーノはあらゆることを一から教えた。
たくさんの言葉、人との接し方、信頼と裏切り。
壁に貼られた絵の作者、レコードの使い方といくつかの歌、キャビアの楽しみ方とワインの味。
ルチアーノは言葉を解す犬に芸を仕込むような気分だった。
少女は少しのものを失って、沢山のものごとを得た。
そのうち名前も付けた。
捨てたゴワゴワの服に刺繍されていた数字の、下一桁で『3(トゥレ)』と呼ばれていた少女。
ルチアーノは古い本を捲って「これはどうだ?」と指差した。
少女は目を輝かせ、にっこりと頷いた。
新しい名も古い本も、なによりルチアーノが好きになった。
彼は生臭い用事でたまに家を空ける。
その間に読んだ古い本の中で社会の仕組みを知り、出かける度に持ち帰られた新聞で世界の存在を知った。
そうしながら最初の一年が過ぎ、少女は16になった。
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