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少女に、もう痛みは無かった。
それが薬の効果かどうなのかは解らなかったが、とにかく体を起こすことは出来た。
見知らぬ場所だった。
昨日でちょうど15年。自分が15の誕生日を迎えた施設のどことも似つかない。
園長の部屋にあるものより、さらに高級そうな、そして過剰な装飾の施された家具。
やはり高級そうなテーブルに転がる酒瓶、かじりかけで乾いたチーズとパン、漂う酒のにおい。
壁に貼られた、チャーミングな笑顔の映画スタァのピンナップと、美術史の本で眺めた絵と同じタッチで描かれている絵画。
てっぽう。
「観察はそのくらいにしなさい。これからいくらでもできる」
声のした方を振り返ると、男が立っていた。
線が細く背が高く、細い顎の、暗い目をした男だった。
「その汚い格好をどうにかするのが先だな。バスルームは向こうだ」
バスルームまでの短い距離を歩く少女が着ていた、もともとゴワゴワする麻の服は、染み込み固まった血でさらにゴワゴワした。
肩にぶちまいたような血ノリの原因になるような傷は見あたらない。
ただ、臍の中心から下に向けて、三センチほど縦に切った傷が黒い糸で縫われていた。
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