…イントロダクション
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───数日後。
巨大な組織に属するルチアーノは、鬱蒼と茂る林の中に佇むある施設を訪れた。
そこは街から離れた場所に位置した、孤児を引き取って世話をする慈善団体。
───表向きは。
通ってくる者もいないような場所に建つ協会には黒い噂がいくつもあった。
ある者は『臓器売買の密輸組織』だと言い、またある者は『カルト教団』だと言った。
真相は知らない。
興味もなかった。
ただ、まことしやかに囁かれるそんな噂があったからこそ、高額紙幣の札束を一つだけ携えてここに来た。
権力と立場を利用してうまく立ち回れば、こんなチンケな建物を焼き払い、跡形も残らない更地にすることなど訳なかった。
簡単にいえば、二つあった選択肢のうちの、面倒でない方の手段を選択しただけだった。
十字架に叩きつけられた神の前に、ルチアーノは立っていた。
「金曜の夜、組織の会合からの帰りにここの子供を一人轢いた」
格好だけは牧師と尼僧だが、完全にイッている目をした二人を目の前にルチアーノは隠しもせずにそう言った。
言葉の端に権力の匂いをほのめかしたのは、もちろん脅しだ。
「おぉ……それは、何という……」
狼狽した牧師は、丸眼鏡の奥のイッた目をかっ開く。
尼僧など驚きもせず、ただ形だけ取り繕うように胸に下がった十字架を握った。
「遺体の損傷が激しかったのでこちらでシ……『埋葬』した。葬儀代にしてくれ」
胸元から札束を出し、牧師の胸に押し付ける。
受け取った牧師の口が途端に緩んでニィと弧を描き、臭い涎がダラリと線を垂れた。
「あの子は幸せです。どのみち、『重い病』で長くは生きられなかったのですから。長く続く痛みもなく逝けたのは、本当に幸せなことです」
手の中の金に、牧師は『幸せ』を繰り返した。
磔刑に処された神とルチアーノの間で、何度も繰り返した。
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