クラフト・ワーカー(ズ)
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「なー、アメリカいかねぇ?両親紹介するよ。弟も、兄貴も」
「フフ、行かない」
彼の唐突な申し出を、彼女は笑って受け流した。
彼はジョークを言ったつもりも無かったのだが、恋人、という間柄でもなかったなら彼女がそう受け取るのも無理はない。
「だめ?」
「チョコレートがザラザラで油っぽくて、美味しくないもの」
「ウゥー!ちくしょー」
祖国の言葉で、多分有名な菓子会社の名前を幾つか出しながら彼はブツブツと文句を言っている。
いつまでもこうしている訳にもいかないと、彼女は体を離した。
───途端。
二人の目の前をカラフルなサテンの光が横切った。
「!!」
「!何だお前ッ」
どん詰まりに突如現れた仮装の男が彼女を羽交い締めにしてガラクタの…ちょうどバイクのシート部分に片足で立っていた。
首の周りをぐるりと囲む蛇腹の襟や、何枚ものひし形を縫い合わせたふざけた服は、仮装というよりサーカスのピエロ。
仮面だけがにかわで作られたヴェネツィアのバウッタで、その下で赤い唇がヌーっと弧を描いた。
「イーッツぁ、ショーゥ、タァーイム!」
彼にしてみれば発音箇所に色々突っ込みを入れたい所だったが、今はそんな場合ではない。
どういうトリックなのか、目の前の金髪ピエロはひらりと手の中に拳銃を取り出し、彼女のこめかみに突きつけた。
派手な衣装からあからさまに浮いている、無粋で鈍い色の、本物のシグ・モスキート。
レンガの間に降る日ざしが、ピエロのブロンドをつやつやと輝かせる。
「テン!ナーイン!次なんだっけ?シックス、フェイブ!面倒だな」
少し顎を上げたことで、濃い影を落としていた仮面の奥の瞳がギラリと光をはじく。
横に深く切れた口元が、奥歯まで見えるほどギィッと開かれた。
「スリィ?」
冗談じゃあない、殺される!
ピエロのカウントダウンに、彼は足を踏み切った。
「HEY!Stop I「ぱん!!」
ピエロと彼女が、消えた。
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