『3104丁目、黒井』
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「熱いモンを熱いうちに喰えねェなんて、人生の半分を損してンぜ」
早メシ早グソ芸のうち。
江戸っ子気質のプロシュートが、七見に入っていた芥子の実をプッと皿に飛ばした。
「うるせぇよプロシュート。それより、アンタはキャバクラの名刺をシャツの胸ポケットに入れるなよな。そのまま洗濯するとボロボロになって他の服に貼りつく」
「あー、テメェのメイド・イン・チャイナだかメイド・イン・タイランドだかの服も色落ちして、よく俺のシャツを再起不能にするもんなァ」
─── 一触即発。
嫌みの応酬が喧嘩のゴングと代わる寸前、二人のちょうど真ん中に、ズドンと菜切り包丁が突き刺さった。
がんもどきをくわえたまま、リゾットが睨みをきかす。
「メシくらい落ち着いて食わせろ」
「ちょっとリーダァ!畳に傷つけないで頂戴ッ!猫の爪とぎよりタチが悪いわッ!!」
「……スマン」
実力行使の仲裁は効を奏したが、今度はジェラートが金切り声をあげた。
リゾットは所在なげに謝るが、ざっくり切れたイ草が元に戻る訳でなし。
ソルベもウンザリしたため息を鼻から抜いて、油揚げをシャクシャク噛んだ。
「ところで猫は?」
「「あれ?」」
ナナシの声に、イルーゾォとペッシが顔をあげた。
さっきまでがんもと格闘していた猫が、いない。
あふゥ~スリスリ、としていたホルマジオの姿を思い出し、皆が顔を見合わせた。
「さっき、『絶対に逃がすな』っつって言って出て行かなかったか?」
「えー!どうしよ!」
「そりゃあ探しにいかなきゃあな……ッ!」
立ち上がろうとしたギアッチョの手首をソルベが、パンツの膝のあたりをジェラートがひっ掴んだ。
「口実が出来たと思って。逃げンじゃあないわよ?」
「残さないの!」
卓袱台の上、箸が転げた皿にぷっくり煮含まったがんもどきが鎮座している。
「オレは雁(ガン)じゃあねークセに『もどき』って付けりゃあもいいと思ってやがる大豆のすり身に納得いかねぇんだ!嫌いなワケじゃあねぇぞ!」
「ゴタクはいいわ」
「お食べなさい」
男二人の力に抑えつけられジタバタするギアッチョを放っておいて、
ナナシとメローネとペッシが座を立った。
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