『3104丁目、クイズ』
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風速0メートル。
狭い路地の奥には気持ちのいい風など、まさに『どこ吹く風』。
去年の祭りで買ったギヤマンの風鈴はぶら下がったままで短冊を1ミリも揺らさず、したがって涼しげな音を奏でてはくれない。
まだ午前中だと言うのに網戸の奥の茶の間は蒸し暑く、蚊取り線香の煙がまっすぐ天井へと上っていく。
心なしかベタつく畳の上、身の置き場に困ったむさ苦しい男達がゴロゴロと横になって伸びていた。
「ギアッチョ、氷」
「昨日スイカ食いすぎで腹下したら、全ッ然、チョーシ出ねェ」
「……役立たず」
「テメーもな……」
アイスノンを抱きかかえたイルーゾォが悪態をついたが、自分自身も全く調子が出ず、精神力のへし折れている今は鏡の中の世界も安定しない。
いつもなら取っ組み合いの喧嘩でも始めそうな流れだったが、この暑さの中で汗ばんだ男と絡み合う気にはならないようだ。
暑さに対してはもっと役立たずのホルマジオとペッシが扇風機の前を占領していた。
「なんかこう、暑さを忘れるような事ないッスか……ホラーとか」
「しょうがねェなぁ。メローネが変態ドクターの所から持ってきたビデオなら何本か」
ペッシの提案にホルマジオが答えてみたが、ホラーというよりスプラッタのゲンナマ映像を想像し、全員がガックリと頭を落とした。
「ソルベとジェラートはいいよな。とっととエアコン付けやがって」
「馬鹿言えよ。GスリーからGファイブまでのマックとビスタで計五台、各種周辺機器、映像機材に音響設備。エアコンなんかフルでかけ続けても蒸し風呂だったぜ」
薄い壁一枚を通して熱気が伝わってくるようで自分の部屋から逃げ出したイルーゾォは、涼しい空気に淡い憧れを抱いたホルマジオの夢を一瞬でうち砕く。
ちょうどいいタイミングで「何よッこのオカマ!!」「なによアンタこそオカマ!!」と甲高い声が聞こえ、ソルベかジェラートどちらかに投げられたメローネの悲鳴と襖の外れる音がした。
今月で5回目、熱気が二人のイライラをつのらせている。君子危うきに近寄らず、ホルマジオは冷たい風を諦めた。
「スイカ喰うか?」
「兄貴が『腹冷やすから朝からスイカ喰うな!』って言ってやした。昼喰っても腹壊したのがそこに居るけど」
「うるせェぞ糞ったれマンモーニ。うぉ、思い出したら腹イテェ」
「いや、お前が糞垂れだろ」
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