『3104丁目・VS』
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───ピィイン、ポォウゥ……ン
チャイムに関しては、もう何も言うまい。
ギッシギッシと力強い足音が近付いてきたかと思ったら、今度は赤毛のボーズ頭の男がガラガラと戸を開ける。
僕は相手の反応を観察もせず、先手必勝とばかりに口を開いた。
「僕は『皆が幸福に暮らせる新しい世界』を目指し、お話をさせて頂いているんですが聞いていただいても構いませんねッ!」
「『みんな』が幸福?」
よし、言った。掴みはオッケーだ。
「はい!『皆が幸福に暮らせる新しい世界』を」
「……いいか、よく聞けよ」
突然、ボーズの男はがっちりと両腕を掴んだ。
先ほどまでのダルそうな目は、今や真剣そのものだ。
「は、はい」
何か僕は間違っていただろうか。
いや、そんな筈はない!……と思いながらも気圧されて、返事はどもってしまった。
「世界には、お前とオレがこうしてくっ喋ってる間にも、腹を空かして泣いてるガキが沢山いる。いや、泣く力もなくて死んでいってる」
「はっはい、ですから『皆が幸福になれ」
「バッキャロォォオオ!」
がつーん!
突然、殴られた。
人に殴られたのなんて始めてのことだった。親父にも打たれたこと無いのに。
「そいつらに今必要なのは教えじゃあねぇ。食いもんだろ!違うか?『人を救いたい』なんて壮大な志(こころざし)があるんだったら、まず働け!働いて最低限の暮らしして、寄付するなり井戸掘りに行くなり畑作りに行くなりなりしやがれ!」
頬がジンジン痛んで、鼻の奥もジュワッと熱くなって、口に血が入ってきて。
しょっぱかった。
「……ごもっとも、です……」
僕は頬を抑え、ゴミ溜めのような路上の壁に座り込んだまま。
自分の無力さに。
泣いた。
「あー、何だ、しょおがねぇヤツだな。その……メシでも食ってくか?」
泣きながら。
頷いた。
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