『3104丁目・VS』
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───ピィイン、ポォウゥ……ン
ずっとこんな音で、『黒井』さんの住人は気持ち悪くないのだろうか。
自分なら耐えられないのにと思っていると、トントン、ドタタッと階段を踏み外す音がする。
ギッギッと古い廊下の木が鳴って、ガララッと戸を開けたのは眼鏡の青年だった。
いったい何人住んでいるんだ、この家には。
出てきた彼のフワフワ頭はグシャグシャで、開くか閉まるかハッキリしない目はあからさまな寝起き。
悪いことをしてしまったかなと思いつつ、折角起きていただいたのなら尊い教えを聞いてもらわねばと冊子を差し出した。
「僕は『皆が幸福に暮らせる新しい世」
寒い。
とつぜん凍てつくような寒気に襲われる。
天気は晴れでポカポカ陽気、寒くなる要素など見当たらないはずだった。
「おいクソムシ……」
震える体を抑えて顔を上げると、眠ってしまいそうな青年が凍るような視線でにらみつけている。冷たい。
「今なんつった?」
お、
睨んではいるけど、興味は持ってくれているみたいだ。よかった。
「あ、途中でしたねすみません!『皆が幸福に暮らせる新しい世界』のお話」
「徹夜明けで帰ってきて風呂入って今ようやく寝入ったオレに階段を踏み外させて、ナニが幸福だナニが新世界だこのクソ野郎ォオオ!!」
突っ立っていたら何か投げつけられかねない剣幕に、僕はすたこら逃げ出した。
大きな声で「おとといきやがれ!」と声がする。
「昨日もおとといも来ましたがまた来ますスイマセーン!」
あんなに大きな声を出したら、余計に眠気が覚めちゃうんじゃあないだろうか?
彼には正しい教えも必要だけど、あのイライラはきっとカルシウム不足のせいもありそうだ。
教えの冊子のほかに小魚アーモンドと牛乳も持ってきてあげようと、狭い小路を抜けて大通りまで走った。
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