『デパァト』
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娘のサキュラートスカートにも男たちのパンツの裾にも、アイスクリィムやチョコレィトソース、小豆が少し跳ね付いていた。
「一体、誰が言い出したんだ?大穴当てたプロシュートを三時までに捕まえたら焼き肉奢らせる、だとか」
「決まってるでしょ。ギアッチョとホルマジオですよ」
「勝手なこと言いやがって」
華麗な跳躍とほんの僅かな逃亡劇を見せた三人は、けろりとして入り口から入ってくる。
長身の男と娘はコーヒーとレモンスカッシュが残されたままの席に戻り、スーツの男はマダムのテーブルへと歩み寄る。
ぽうっと惚けている彼女らと二言、三言交わし、今度はツカツカとキミエの方へやって来た。
……やって、来た!!!
「あのテーブルに同じものを。それから」
カチカチに固まるキミエに構わず、胸ポケットから取り出した札をエプロンの胸ポケットに押し込んだ。
長い睫がこめかみに触れるほど、男はその整った顔を耳に寄せる。
「お陰で助かった。茶でも奢らせてくれ」
至近距離で漂う男のコロンに、
耳から流れ込むしびれるような感覚に、
たとえ社交辞令であろうと、人生で初めて、しかもこんな綺麗な男に誘われたことに、
キミエ四十一歳、
意識が遠のいた。
「キミエちゃん!?」
倒れるキミエに気付いたヨシオカは、先程の三人のような俊敏さで厨房のワゴンを華麗に飛び越えた。
安い油の臭いの腕の中、キミエには、ヒュウ、という冷やかしの口笛は届いていない。
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