『日本支部・ゲス』
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鼻をグスグス言わせ、赤い目で席にきたウエイトレスにチョコケーキとチーズケーキをドリンクバーセットで注文する。
バツが悪そうにキッチンへと引っ込む彼女の背中を見送って、バーコーナーに移動しながらゲス席の観察を再開した。
チョコラータが、何か不振な動きを見せている。
『何やってんだろ?……調味料?』
適当なティーパックを突っ込んでお湯ボタンを押す
ナナシが、同じマシンからコーヒーを入れているホルマジオに顔を寄せた。
『あ、ちょっと待てよ。砂糖とミルク……ガムシロ使い切られてるじゃねぇか』
ホルマジオがコーヒーを用意する間に
ナナシがチラチラとテーブルを盗み見れば、チョコラータは置かれた醤油やソースをひとつひとつ手に取って……
……フタを緩めている。
塩や胡椒、七味唐辛子は中蓋を外し、何事も無かったかのように整然と並べ直した。
『いやぁあぁゲスぅ!!』
『次にウドン注文したヤツ、七味ドバー!だろ!!』
入れすぎたお茶をこぼさないよう、慎重に席に戻った
ナナシとホルマジオがブルリと震えた。
先に運ばれてきていたケーキより、今まさにチャーシュー麺とパフェとお子様ランチが運ばれていったゲス席が気になって仕方がない。
メニューが揃うと同時に立ち上がったセッコに、ウエイトレスがビクリと身構えた。
が、セッコはそれを気に止める様子もなく、ドリンクバーのコーナーから取り皿数枚とティースプーン全てを持ってくる。
ウエイトレスが、嫌な予感に顔をこわばらせる。
席に戻って、お子様ランチの旗をヒラヒラやりながら、ひとくち、ひとくち。
きれいなスプーンを持ち替えながら食べていく。
『ゲスーッ!!』
『やめてぇ!ウエイトレスのHPはもうゼロよッ!』
積み重なっていくスプーンに、もはや茫然自失でその場に立ち尽くすウエイトレス。
ホルマジオと
ナナシの心の声は、虚しくもゲス二人には届かない。
チョコラータが、丼からわざわざ脂身部分をカットされているチャーシューを皿に避けている。
『めんどくせェエー!』
『最初からラーメンのチャーシュー抜きにすればいいじゃんゲスー!』
向こうの席で、外国人三人と高校生二人がゲスを見ている。
髪を立てた露出の多い白人男性に、異国のアクセサリーを沢山身に付けた褐色肌の男性に、ヒゲがダンディーな初老の外国人男性に、『違います、日本の文化ではありません』と断りを入れたくなる。
高校生2人の視界に『良い子は真似しないでね』と注釈のテロップを流すべきかも知れない。
もちろん、そんな思いが届くはずもない。
チーズケーキの表面にうっすら張られたゼラチンの膜は、手がつけられることなく乾燥に曇ってきた。
コーヒーもお茶も、すっかり冷めてしまっている。
ふと、向こうの席から髪を立てた白人男性が立ち上がった。
「ニホンの便所は豚が顔出したりしねぇぜ」
「舐めても感染症にならないくらい殺菌されているかも知れないですよ」
高校生二人にはやされて、白人男性は「そいつはブラボー」と苦笑いする。
バタンとトイレの戸が閉まった途端。
セッコが動いた。
ドンドン!
ドンドンドン!
ドンドンドンドン!
今し方入ったばかりのトイレのドアをノックしまくっている。
ドン、ドン、ドン!
ドン、ドン、ドン!
『ひぃやぁあゲスぅう!』
『ありゃ落ち着けねぇぜ!!』
トイレの中でガタガタっと音がするや否や、セッコは急いで席に戻り平然とお子さまランチを食べ始める。
ガチャリと開いたドアから、白人男性がキョロキョロと見回した。もちろん、一見、変化は無い。
初老の外国人男性がニヤニヤ笑いながら「オーマイガッ!」と呟くのが聞こえた。
そこでようやく、チョコラータがラーメンをすすりながらこちらを見ているのに気がついた。
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