『日本支部、新年会』
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「オニーチャン、可愛い娘いるよ、安くしとくよ」と決まり文句の呼び込みをかわし、客待ちのタクシーがびっしりと停車した繁華街から裏通りへと抜けて、何軒かの連れ込みホテルの前を過ぎる。
プロシュートからの電話を受けてから、ペッシはすぐに新年会の会場へと向かった。
あらかじめ「今日『も』犠牲者が出るだろうからよろしく頼む」と言われている。
過去の経験から『どんな惨事』が待ち受けているかは、言葉ではなく心で理解していた。
クリスマスにプロシュートから貰ったマフラーをぐるぐると巻いてたどり着いた、小綺麗な店の重厚なドアの脇。
その外装にはおおよそ似つかわしくない粗大ゴミが落ちている。
いや、よく見るとそれはフルボッコにされた長髪の男で、顔は原型を留めていないうえ、上半身は裸である。
ボコボコになった顔はどこかで見たことのあるような気もしたが、ペッシには思い出せなかった。
「オッサン、風邪ひくぜ?」
へんじがない。
ただのしかばねのようだ。
『この不況だもんな』
住むところもなく金もなく食べるものもなく、残飯でも漁っていて店員に殴られでもしたのか。
可哀想になったペッシは少し考えてから、唇と鼻から垂れた血がつく男の首にマフラーをそっと巻いてやった。
「…二日酔いにはシジミかなぁ」
明日の朝はシジミの味噌汁にしよう。
本当はカドの魚屋のほうが新鮮なのを置いているだろうけど、仕方がないから二十四時間営業のスーパーで買って帰ろう。
ついでに温かい肉まんとココアを買って、ギアッチョに差し入れてやろう。
兄貴が待っている。
ペッシは中で起こっている『惨事』をある程度覚悟して扉を開けた。
20090212