『3104丁目、新年』
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「リーダー、りんご飴食べたいです」
「じゃあオレはチョコバナナー」
ナナシは赤を基調にした振袖に、真っ黒な名古屋帯を舞妓のようなだらりの形に締めている。開きの面に金糸で縫い取られた松と鶴とがチラと覗き、嫌みにならない豪華さをそえていた。
メローネは濃紺に白梅が咲き鶯谷の留まる振袖に深い紅の帯を同じようにだらりに締め、紅色の椿の髪飾りをつけている。
口さえ開かなければ、そして遠間から見てその喉仏に気付かなければ、まるで清楚な若い娘のように見えた。
「ナナシはともかく。リーダー、あんたはそれでいいのか?」
美人二人を両脇に従えたリゾットは、艶やかな二人にはとても釣り合わないが、いつも通りシンプルなコートを着ている。
その後ろを他人のふりで歩くイルーゾォも、いつも通りウールのライダースにマフラーをぐるぐるとまいている。
「キャア」と声を上げ、着物の合わせを気にしながらも駆けていった二人を見送り、リゾットはイルーゾォを振り返った。
「ほら、お前も」
差し出された手には、こげぱんのぽち袋。
左上の『 ちゃんへ』と書ける部分には、律儀に『イルーゾォ ちゃんへ』と入れられている。
「───イラネー…」
膝に手をつき全身でがっくりとうなだれるイルーゾォのポケットに、リゾットがそっと袋を差し入れた。
「そう云うな。かるめ焼きでもたこ焼きでも買ってこい」
「屋台飯喰えないってば」
ポンポンと頭を撫でるリゾットを苦笑いで見上げ、イルーゾォはまた歩き出した。
「食い気にかまけてる二人は放っといて、先に柏手打って来ようぜ」
「組の安泰でも祈願するか?」
「まさかだろ?家内安全、交通安全」
「そうだな。そうするか」
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