『3104丁目、新年』
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「Buon anno」
「「Buon anno」」
正午も近くなった一月一日。
遅くまで酒を飲んでいたリゾットはボソボソの頭で台所へと現れた。
昨晩ナナシは、海老の尻尾やら誰も手をつけない黒豆やらが巻き散らかされたコタツ板の上を10時過ぎには綺麗に片付け、このままだと風呂に入らなそうなメンバーを次々に風呂場へと追いやった。
湯上がりのメンバーは23時を過ぎた頃にコタツ板を裏ッ返し、緑色のフェルト面で通例となる年越し麻雀を始める。
ソルベとジェラートはコンビ打ちの危険があるため交代で打ち、ルールを早く覚えたがったペッシはプロシュートと半チャンずつ交代して打った。
点=円換算のために点棒を出さず、牌の間を細長く折られた札が飛び交う。
不道徳極まりない光景は朝まで続き、今は参加したホルマジオとギアッチョ、ソルジェラにプロシュートとペッシがコタツで高いびきをかいている。
お肌がナントカ言って早く寝たメローネは、ここぞとばかりにプロシュートに寄り添いスベスベとした頬に顔をスリ寄せて一人悦に入っていた。
「お雑煮食べたら初詣行きませんか?」
ナナシは大鍋いっぱいに作った具沢山の汁をグルグルとかき混ぜながら、四人分の餅を用意するリゾットに声をかける。
「夕方な。寒くない格好をしておけ」
「ハイ!メローネが着物着付けてくれるっていうから、あのフサフサのも付ければ大丈夫です。あ、あと組の新年会もそれで行きますよ」
「っキモノ、だと?」
椀を盆の上にゴトゴトと取り落とし、イルーゾォがマムシに遭遇した沖縄旅行中の観光客のような顔で振り返る。
「着物は、だめだ。いや、やっぱりいい。いいんだ。だが!それで組の新年会に出ることは許可しない!絶対に!」
「イルー、ゾォ?」
「いいか良く聞け。これはあの2人がッ……グゴフッ……洩らしていた。組長は、着物好きだ」
「アナタの覚悟を見せてもらったわ」
震える背中を抱きしめてヨシヨシしながら、ナナシは自分の部屋の方に視線を向ける。
幾部屋か隔てた先にある、赤い牡丹に蝶が舞う着物と漆塗りの器のようにつややかな黒い帯とがたった1日だけの出番かと思うとつい溜め息だって出てしまう。
「帰ってきたら悪代官プレイ予約」
「俺に譲れよ、ぐぅ、……リーダー」
後ろから声をかけたリゾットに、ナナシの肩にもたれたままのイルーゾォが唸るような声を絞り出す。
「露出が少なくていいと思ったんだけどなぁ」
「着物の良さはオアズケばりのチラリズム、なんだぜ?うなじ、足首、手首」
「アラサーの萌えポイントをナメるんじゃあない」
和物フェチのイルーゾォとジーミソ(※三十路。三十代)目前のリゾット二人の意見には、ナナシも納得せざるを得ない。
もう一度出掛かったナナシのため息は、リゾット前で膨れて焦げだしたモチをストーブの焼網の上から救出することに気を取られてどこかに行ってしまった。
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