『3104丁目、落日』
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「プロシュート!会いたかったわァ!」
宴もたけなわとなった頃。
ドンと背中に覆い被さる衝撃に、プロシュートは口に当てていたお猪口に前歯をぶつけた。
「小ムス……お嬢、来てたンですか?」
酒のかかった手をお絞りで拭きながらギギギと振り返ると、背中には組長の娘トリッシュ。
組長がナナシに今一歩強引に出られないのは、実はこの娘の存在のお陰でもある。
「中学生がこんな集まりにいちゃあダメでしょう?」
慣れない敬語と完全な営業スマイルでギアッチョがグラスにキリンオレンジを注いで渡す。
「要らない、さっきから酌攻めで水っ腹なの。空気読めよアフロメガネ」
ビキッとこめかみに青筋を浮かせたギアッチョの腕を、ホルマジオがクイクイとと引っ張った。
こっそり指す方を見ると、上座からディアボロが鬼の形相でこちらを見ている。
「ねー、プロシュートぉ、いつンなったら付き合ってくれんの?」
父親の眼光をまるで無視し、トリッシュは発育の良い胸をプロシュートにすり寄せる。
「だから、中学生にゃあ手ェだせないですって。だいたいアンタにゃあボブカットの素敵な彼氏がいるでしょうが」
青い顔のプロシュートが再び口に当てたお猪口は、歯に当たってガチガチいっていた。
「あれはボデーガード。それに私、来年には晴れて女子高生よ。ナマJK!嬉しいでしょ」
「お嬢、プロシュートは五十過ぎの熟女じゃあないとと勃たねェんですよ。残念だな」
黙々と箸を進めていたリゾットが、未成年に吐くには相応しくないことを平然と言った。
蜘蛛の糸を目の前にしたカンダタ(想像)のような顔でプロシュートはリゾットを見る。
「嘘おっしゃい若白髪。アンタとプロシュートがセクキャバやらオッパブやらで大はしゃぎって話は、ちゃあんと耳に入ってんだからね」
リゾットは顔をそらして押し黙り、視線を遠い所へやってぬるくなったビールをゴクリと飲み込んだ。
───蜘蛛の糸は、所詮蜘蛛の糸でしかない。
目の前でぷつりと途切れた自分の運命に、プロシュートはナナシとイルーゾォと同じような顔になった。
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