『3104丁目、クリスマス』
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衿乃屋のボイラーに火が入ってしばらくした頃、へし折れた雪椿の枝の上で二人はほとんど同時に目を覚ました。
眩しい。目がヒリヒリする。
晴れてはいないが、姿を現した冬の太陽は薄い雲に光を行き渡らせている。枝に捉えられたギアッチョとイルーゾォが見渡せるかぎりの世界は、すっかり朝に塗り替えられてしまっていた。
絶妙なバランスで引っかかっていた二人の全身が思い出したように寒さを感じ、ブルルっと身震いさせた。先にギアッチョのバランスが崩れて腰の位置で二つ折りになり、尻から地面に落っこちる。続いて落ちたイルーゾォが、ギアッチョをクッションに枝から落ちた。
南天と柊の枝もついでにへし折って、頭の上に真っ赤な実と葉っぱの屑が降ってくる。
同時に、二人の頭の上に位置する枝に引っかかっていた『何か』も、それぞれの頭に落っこちた。
それはイルーゾォがギアッチョに用意していたヘアサロンの『超強力サラサラストレートパーマ無料招待券』の包みでも、ギアッチョがイルーゾォに用意していた『温泉用肌色全身タイツ股間にコンモリ黒アフロつき』の包みでもなかった。
二人は同時に空を見る。
一番太い幹を折られ、できはじめた硬い蕾と緑色のツヤツヤした葉を散らした無残な椿の枝の、もっとずっと上。見上げたはるか上空を、朝日をチラチラと反射しながら横切って行くものがあった。
年季の入ったボイラーがドウドウと鳴るのに混じって、微かな鈴の音が、確かに聞こえる。
国際線の飛行機。近所のテレビ番組からのBGM。常識的な理由をつけるには、そのシルエットはあまりにも───はっきりとしすぎていた。
このあと大家のエリノアとリゾットにこっ酷く叱られるだろうギアッチョとイルーゾォは、手の中の包みを胸に抱えたまま、空を駆けて行くそれを見ていた。
赤と白で出来たその影が、賑やかに跳ねる鈴の音とともに、冬の朝の白い空にすっかり溶けて無くなってしまうまで───
Buon natale 2013 !