認めて。こんな自分も全部
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封を切られたばかりの角砂糖の袋は、机の上に忘れられていた。正立方体の結晶は袋の中に整然と並び、ざらざらした正方形のレンガ壁の形になっている。机の主はきっと知らない。いや、忘れてしまっているだろう。彼にとって、ただ甘いだけの砂糖の存在など、きっとどうでもいい。
彼の興味。甘い甘い角砂糖よりも、血。
鋭く切れるメス。
顔を近づけることもできない、強い薬品。
新しいオモチャ、まだ息をしているものが理想的。
怒り、呪い、やがて絶望に満ちる瞳。
それらを収めた映像のコレクションを増やすこと。
セッコは机の下に隠れ、下から手探りに袋を取ろうと画策する。じゅうぶん、隠れているつもりだ。何の覆いもない、向こうがすっかり見えてしまうすっからかんの机の足の下でも。
おおよその位置をまさぐる。
袋をひっくり返せば整然と並ぶレンガ壁は崩れ、四角い砂糖のいくつかは角を削りながら転がり出てくるだろう。
ひっくり返さないように。袋の口に二本の指を突っ込んで、ひとつだけ、ひとつぶだけつまんで、指を抜けばいい。
突如、セッコの手の甲に、熱が走った。
おどろいて手を引っ込める。
反動で揺らいだ上の何かから、先ほどと同じ温度の熱い液体がセッコの手にこぼれた。
見上げた机の天板ごしに、ニタニタと笑うチョコラータの顔がある。
「つまみ食いとは、卑しいやつだ。置き忘れたとでも思ったのか?」
袋に指を突っ込むと、チョコラータは一かけの砂糖を取り出し、シミだらけのカップにポトンと落とした。
彼は意地悪だ。
そう思いながらフウ、フウと息を吹きかける手からは、セッコの嫌いなコーヒーの苦い匂いがした。
『認めて。こんな自分も全部』
でも、好きあってるんでしょう?