求めて。身動きできなくなるくらい
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本来なら、任務に駆り出されたメンバーの名前と、そこから伸びる矢印によって埋め尽くされるはずのカレンダーの余白が、今月もほぼ白紙のまま終わろうとしている。物騒な任務の詳細はプラチナブロンドの頭の中に収められているので、他人に見られて困るような内容を記することはない。それぞれが不在になるだろう、大まかな日程を把握するめに使われる小さなカレンダーは、かつては大きなサイズで用意しなければ、細い矢印で埋め尽くされていた。しかし最近は、ご覧の有様だ。
これ以上の暇が続けば、各自のパフォーマンスレヴェルは確実に落ちる。
案じなければならないことは山積みだが、三十手前の男がひとりで頭をかかえたところで、カレンダーはいっこうに埋まらない。
「……いっそ、何か店でも始めるか」
ほんのささいな思いつきが、思わず口をついて出た。リゾットにしては珍しい。
しかし、冷静なリーダーらしく「それで、次は売上のことで頭が痛くするのか」と、先の台詞を吐いた自分を嘲笑した。
「ひとりでブツブツ言ってンなよ。気味が悪ィ」
余暇をバカンスに費やすこともできないプロシュートが悪態をつき、悪習の煙草にまた火を付ける。微睡むように伏せられた目の下で頬がへこむ。キスの形に尖らせた唇が白い煙を吐き、部屋の空気をさらに濁らせた。
『求めて。身動き出来なくなるくらい』
仕事の予定は、無いよりあったほうがいい。
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