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狭い部屋のすべてが、混沌の臭いに汚染されていた。
目の前には、真冬の銀色の目をしたプロシュート。
組まれた腕、開かれた脚、半分閉じるようにして見下すその瞼のすべてから、彼の苛立ちが振りまかれていた。
ペッシであったら、『怒りの原因が何であるか』を問う前に、ただ泣いて許しを請うのだろう。
部屋と不愉快なまなざし。この両方から逃げ出しそこねたイルーゾォはただ、椅子にかけていた。
視線から逃げるように、俯いて。
「いつからだ」
プロシュートの質問は尋問でありまぎれもない脅迫だが、いつも穏やかに始まる。
「さぁ?覚えちゃあいない」
非を認めれば、すぐにでも温かな食事が目の前に用意されるだろう。
イルーゾォはのらりくらりの返答を選ぶ。
「最後は何だった?」
プロシュートが取り繕う『穏やか』に、早くもザワザワと不穏な波が立ち始める。
「……あぁ、そうだな。炙った何かか、冷たいヤツだったか。粉末だったかも知れない」
頭蓋の形が解るほどこけた頬を、プロシュートの手が掴んだ。
薄い皮の張った、骨の感触だった。
「真面目に答えろ」
「覚えちゃあいないんだ、本当に。勘弁してくれよ、後生だから」
「テメェは死ぬつもりか」
「簡単には死なないさ。アンタもよく知っているだろう?」
減らず口ばかりを紡ぎだす潤いのないくちびるに、プロシュートは何か喰らわしてやりたくなる。
「『簡単には』死なねェだろうが、『難しくしたら』死ぬんだよ。ゴタクはいいから、さっさと」
語尻をアラームが遮った。
細い膝がぱっと立ち上がり、顔にかかっていたプロシュートの手と自分の髪を払いのける。
「残念。時間だ」
「これから任務か?テメェ、最初から『これ(タイムアップ)』を狙ってやがったな」
イルーゾォは立ち上がりざまに襲いかかった目眩を、目をとじてやり過ごす。
蓄積された倦怠感と栄養の不足による筋肉のしびれが、イルーゾォの体をジワリと蝕んだ。
「いいか、帰ってきたら必ず食え!いいや、喰わしてやる!最後に喰ったのが炙ったソーセージだろうが冷たいドルチェだろうがココアの粉だろうが関係無ェ、全部まとめてその薄っぺらい腹に詰め込むからな!」
イルーゾォはつい、牛の真似をして腹を膨らましつづけ、ついに破裂したアマガエルの物語の挿絵を思い出してしまった。
「そりゃどーも」と嘲笑まじりにブツブツ言った嫌味な礼は、プロシュートをさらに
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