オーフリー
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ゆっくりとした動作で入ってきたのは、メローネだった。
ぴったりしたジーンズのポケットの左右に、それぞれ親指を引っ掛けている。
一瞬明るくなった室内は、扉が閉じられると同時に、また薄暗くなる。
パチン。ジッポーライターの蓋が開く。
メローネは震えの治まらないナナシを気遣うでも、気にするでもなく、足元のあたりに腰掛けた。
下方のスプリングが揺らいで沈む。
ナナシは緊張でこわばりついた手から銃を離せずにいた。信用できる者がいない中、たとえ弾が無くなった役立たずのリボルヴァーでも、『人を殺すことが出来る道具』を握りしめることで精神の安定を図ろうと無意識下に起こる、ただの反射だった。
ベッドの上に上半身を起こしたナナシと目を合わせ、舌で上唇を舐める。
「なぁ、どうだい?仲間だと思ってた奴らに裏切られる気分ってさ」
嘲り。今にも笑い出しそうな。
ナナシはおかしくなりそうだった。
裏切りの連続に憔悴しきり、大声で叫んでめちゃめちゃに暴れ出しそうな精神を何とか落ち着かせることで精一杯で、メローネの声がやたらと遠くに感じた。何事かを喋るメローネに、ナナシは幾筋も汗の滴った顔を上げ、細く笑った青いほうの目を睨む。メローネは構わず続ける。
「どうして?って、思うだろ。教えてやるよ。お前はお払い箱なんだ。お前は知りすぎた。知りすぎて、そして引っ掻き回しすぎた。仕事の本分をちゃあんと弁えている、賢いナナシなら解るだろう?オレたちは暗殺者、組織にとって都合の悪い奴らを始末する。お前を始末するのも、今までと何も変わりない、ただの任務だ。ずっとそうしてきただろ、なぁ?お前もさ」
メローネは上着を脱ぎ捨てると、ナナシの足元からぐっと身を乗り出す。
「……ね、ヤらして?最後にお前の好きな場所を全部憶えておきたいんだ。心配しなくっても母体にはしない。単にオレの興味だから」
ナナシの答えは、両腕を付き出してした拒絶であった。
のしかかってくるメローネの身体を押し返す。射撃の反動でしびれたままの利き腕は力が入らない。
絶望的な瞬間を立て続けに三度も経験したナナシの身体と心が、そうやすやすと生ぬるい性行為の準備を整えるはずがなかった。そして行為の先に待つのは死である。
自分を拒むナナシの手をそっと取り、メローネは親指の付け根を食むようにキスをした。
「最高の瞬間に、殺してやるよ」
悪戯っぽく無邪気な笑顔の中で、冴えた昼の空の色をした目だけが、ぞっとするほど鋭く光っていた。
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ぴったりしたジーンズのポケットの左右に、それぞれ親指を引っ掛けている。
一瞬明るくなった室内は、扉が閉じられると同時に、また薄暗くなる。
パチン。ジッポーライターの蓋が開く。
メローネは震えの治まらないナナシを気遣うでも、気にするでもなく、足元のあたりに腰掛けた。
下方のスプリングが揺らいで沈む。
ナナシは緊張でこわばりついた手から銃を離せずにいた。信用できる者がいない中、たとえ弾が無くなった役立たずのリボルヴァーでも、『人を殺すことが出来る道具』を握りしめることで精神の安定を図ろうと無意識下に起こる、ただの反射だった。
ベッドの上に上半身を起こしたナナシと目を合わせ、舌で上唇を舐める。
「なぁ、どうだい?仲間だと思ってた奴らに裏切られる気分ってさ」
嘲り。今にも笑い出しそうな。
ナナシはおかしくなりそうだった。
裏切りの連続に憔悴しきり、大声で叫んでめちゃめちゃに暴れ出しそうな精神を何とか落ち着かせることで精一杯で、メローネの声がやたらと遠くに感じた。何事かを喋るメローネに、ナナシは幾筋も汗の滴った顔を上げ、細く笑った青いほうの目を睨む。メローネは構わず続ける。
「どうして?って、思うだろ。教えてやるよ。お前はお払い箱なんだ。お前は知りすぎた。知りすぎて、そして引っ掻き回しすぎた。仕事の本分をちゃあんと弁えている、賢いナナシなら解るだろう?オレたちは暗殺者、組織にとって都合の悪い奴らを始末する。お前を始末するのも、今までと何も変わりない、ただの任務だ。ずっとそうしてきただろ、なぁ?お前もさ」
メローネは上着を脱ぎ捨てると、ナナシの足元からぐっと身を乗り出す。
「……ね、ヤらして?最後にお前の好きな場所を全部憶えておきたいんだ。心配しなくっても母体にはしない。単にオレの興味だから」
ナナシの答えは、両腕を付き出してした拒絶であった。
のしかかってくるメローネの身体を押し返す。射撃の反動でしびれたままの利き腕は力が入らない。
絶望的な瞬間を立て続けに三度も経験したナナシの身体と心が、そうやすやすと生ぬるい性行為の準備を整えるはずがなかった。そして行為の先に待つのは死である。
自分を拒むナナシの手をそっと取り、メローネは親指の付け根を食むようにキスをした。
「最高の瞬間に、殺してやるよ」
悪戯っぽく無邪気な笑顔の中で、冴えた昼の空の色をした目だけが、ぞっとするほど鋭く光っていた。
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