あの街の夜の物語
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今日は妙に客の入りが良い。
ブチャラティの席のだし巻きを巻き終えたとき、リゾットと同じくらい来ている『ソリッド』が店のドアを開けた。四席しかないカウンターの、リゾットと反対の端に座る。いらっしゃい、とおしぼりを手渡されながら、「いつもの」と告げた。
サッポロの瓶ビールの栓を抜く。付き出しが足らなくなりそうなので、サラダ菜の上に出来合いのポテトサラダを絞って出した。
「嫌ンなっちまうな、顔も見せてもらえない娘が、今度はヴァイオリンを始めるんだとよ」
「あら、全然会ってらっしゃらないの?」
「生まれてすぐ嫁と別れて、今年中学だ。養育費だ入学金だって催促だけ来て、あとはナシのツブテさ」
カロリーの高いマヨネーズたっぷりのポテトサラダなんか出すんじゃあなかったかしら、とナナシはちょっと反省した。空酒の『ソリッド』の瓶は、ブチャラティとアバッキオの席にだし巻きを出して帰ってくる頃にはもう空だ。
瓶の傾け方で中身が無いのを確認し、ナナシはいつも通り、黙って二本目のサッポロの栓を抜いた。
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