チェッキーノ
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風の強い午後。
誰もがシエスタを貪っていたいと思う生暖かい気温の中、俺はナナシと二人で朽ちかけた廃ビルの屋上に立っていた。
ナナシが旧時代のカルカノを手際よく組み立て、その脇に伏せるのを後ろから眺める。
今回のターゲットはある事件の容疑者。
「護送車で運ばれる瞬間を狙え」
見えないボスの無茶振りにもほとほと呆れたが、スナイパーとしての腕を見るいい機会だとナナシにやらせてみることにした。
ここから見える街外れの通りを護送車が通る予定まであと十分。
目張りされ外からは何も確認出来ないうえに窓という窓に金網が張られている護送車の中のターゲット。
鉄の鎧を着た騎士をアイスピックで殺せど言ってるようなもんだ。
あらかじめ潜入させていたホルマジオにターゲットの位置を確認する。
「最後部座席のど真ん中、真後ろからは狙えない。カーブを曲がる瞬間、72度の角度で狙え」
「D'accordo」
物騒な獲物を抱きかかえ寝転ぶナナシ。
くびれたウエストからのヒップラインが絶妙である。
ピタリとした黒いショートパンツから伸びる足を投げ出してふくらはぎのあたりで交差させ、上になった足のつま先でトン……トン……とリズムをとっている。
眠りにおちそうな猫の尻尾が、パタリ、パタリと音も立てずに地面を叩くのによく似ていた。
自分も隣に伏せ、背中から手を回して腕の置き位置と重心をなおしてやる。
「これは右に重心が傾きやすい。気をつけろ」
つい触れてしまう銃身から腕を外してやり、抱え込む体をすこし立てさせる。
「緊張しているか?」
「ある意味」
プレッシャーのせいかナナシの動きがぎこちなく、少々不安になってきた。
「これ以上腰を引くな」
浮かせ気味になった腰をぐっと押さえつけ、体制を整える。
「リー……」
「来た」
低い建物の隙間からターゲットがチラリと見えた。
カーブを曲がるまでの間合いを計る。
「カウントする、3、2、撃て!!」
パシュッ
「……しくった」
「は?」
「外しました」
「何だと~!?!?!?」
急いでスコープを覗き込み、ホルマジオに連絡を取る。
急停車したらしい護送車にナナシの腕が絡んだままのカルカノで狙いを定め、移動したターゲットの位置に3発打ち込んだ。
トランシーバーから落ち着きを取り戻したホルマジオの声が聞こえる。
「任務完了だ」
「……スイマセン」
「……」
さすがに呆れてモノも言えなかった。
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