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いにしへの詩

市場


その日、満足の無ひ涼しさの中で
ひとつの果実が売られてゐた。

何者にも負けぬとする
その深緑と黒さは
突然に放たれた光によつて、永遠に失はれた。

また 繰り返すのだらうか
犯した過ちをかへりみず、
その平が和である事を忘れ、
あくる日の笑顔を捨て、
昨日の悲しみを踏み散らし、

そして また
市場に闇が堕とされる

光を疑はぬ者程に 闇に近ひ者は居なひのだと
教へを受けたあの日々は、
もう 何処にも無ひ。

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