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保健室の常連

「このときの神経伝達物質は……」
 授業なんて、教師の雄弁と板書写しなんて、一体何のためにあるんだ。はっきり言って面倒臭い。テストで良い点取って、良い大学に入ったって、このご時世で満足する生き方なんて出来ないのに。
「そう、アセチルコリンだな」
 教師は皆、俺のような生徒に向かって口を揃えてこう言う。
 御前はやれば出来るんだから、もっと真面目にやれ。
 その文句ならもう聞き飽きたし、興味無いことに真剣になれる訳が無い。俺は興味があることだけに全力を注ぐ。
「アセチルコリンとノルアドレナリンは……」
「先生」
 白衣に眼鏡の生物教師の話を遮って、俺はいつもの宣戦布告をした。生物教師はまたかという顔をしながら俺を見た。
 ええ、お察しの通りです。
「頭痛がするんで、保健室行って良いですか」
「体調管理はちゃんとしろよ」
 保健室使用票に慣れた手つきで俺の名を書き入れ、彼はそれを俺に渡した。受け取ると、俺は教室の引き戸を威勢よく開いた。二月の終わりの廊下は、暖房の効いている教室よりも遥かに寒い。一刻も早く再びの暖かさを。その思いで、戸を閉めると俺は早足で保健室へ急いだ。
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