本編
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「……あれま、どこここ。ポケモンセンター?」
「ココハ、ギアステーションノ医務室」
目を覚ましてなんとなく見覚えのある天井を見つめているとキャメロンさんの声が聞こえたので、前にもこんなやり取りをしたなあと思い出す。キャメロンさんの隣にはぐすぐすと目を擦りながら泣いているメイちゃんが立っていた。
「ナナシさん、ごめんなさい。わたしが、わたしが無理やり、ナナシさんが具合悪かったの、知らなくて」
「メイちゃん、泣かないでよ〜」
確かに押し込まれたときは御無体な、なんて思ったけれど、そのあとに続けると決めたのは自分の意志だ。メイちゃんのせいではない。
「別に具合が悪かったわけじゃないんだ。ちょっとね、わたし乗り物酔いがひどいんだ」
ふふふ〜と笑ってくるくると両手を見せるとメイちゃんの涙が少し止まる。キャメロンさんも不思議そうな顔を見せた。
「いつもは酔い止めの薬を飲んで、乗り物酔い防止のリストバンドを着けて電車に乗るんだけど、バトルサブウェイに挑戦する予定がなかったから家に忘れてきちゃった」
その言葉にキャメロンさんは、ああ、というような顔を見せた。いつも着けている気合のリストバンドがないことに気づいたようだ。それからため息をつくと、少しだけメイちゃんに退席してもらうよう頼んでいた。
キャメロンさんが太ももの上で頬杖をついて丸椅子に座る。わたしが上体を起こそうとしたら、寝テロ、と怒られた。
「イツモ無理シテ来テタワケ?」
「ちょっと頑張ってたよ~」
「イツモベンチデ寝テタノ、酔ッテ動ケナカッタカラ?」
「寝ると少し楽になるんだ。もうそこそこ元気だよ~」
心配されそうだからキャメロンさんには乗り物酔いがひどいことを知られたくなかったけれど、バレてしまった以上仕方がない。キャメロンさんとバトルするときや一緒に電車に乗るときは安心するからかあまり酔わなかったよ、ただ降りたあとはやっぱり目の前がちかちかする、他の鉄道員さんとバトルのときは酔っててあまり本気が出せなかった、と言うと、彼は少し複雑そうな顔を見せた。それから大きくため息をつくと、口を開いた。今まで見た中で1番大きなため息かもしれない。
「……ナナシ、失恋シタッテ、誰ニ」
やはりカズマサさんはキャメロンさんにも言っていたようだ。クラウドさんに伝わっていた時点でそうだろうなとは思っていたけれど、失恋相手にそれを聞かれるのは少し具合が悪い。
「キャメロンさんには関係ないじゃん。全く、カズマサさんは口が軽いな~」
冗談っぽく言うと、キャメロンさんはムッとした表情を見せた。なので、ちょっと言い方がまずかったかなと思っていると、キャメロンさんはまた口を開いた。少しだけ顔が赤い。
「関係アルカラ聞イテンノ。イッツモ言ウコト聞カナイデ、人ノ肩ニ保タレタリ膝ノ上デ寝タリ。ベンチデ寝テルトコロヲ起コスト、アレマ、トカ言ッテ笑ッテテ。ナノニ最近、7両目デ待ッテテモ来ナクナッテ、ベンチデ寝テルトコロモ見ナクナッテ。仕事ノ方デ忙シイノカト思ッタラ、失恋シタカラトカナニソレ。ホント、芸術家ッテ自由人。ヒトリデ浮カレテタノ、バカミタイ」
キャメロンさんの最後の言葉に少し違和感を覚える。
「あれ? もしかしてキャメロンさん、彼女さんいない? この間一緒にいた女の人は違う人?」
「俺、フリーダケド。誰ノコト言ッテルノカ知ラナイケド、ソレタブン他ノ職員ノ彼女ダヨ」
他の鉄道員さんの交際関係はあまり知らないけれど、確かに彼女さんや奥さんのいる人がいてもおかしくない。それに、いくらキャメロンさんがチャラそうな見た目をしているからって、同じ職場の人の彼女さんにちょっかいかけたりはしないだろう。なので試しにあのとき見た人をクロッキー帳にさらさらと描いたら、アノヤロウ、と怒ったので本当に他の鉄道員さんの彼女さんだったようだ。ということは、まだわたしにチャンスは残っているらしい。
「あれま、わたしの勘違い。じゃあまだ失恋してなかったんだ~」
「ハア? ナニソレ」
キャメロンさんは意味がわからないと言いたげな表情をしていた。
「てっきりキャメロンさんに彼女さんがいるもんだと思ってたから、告白する前に振られちゃったな~って。それをメイちゃんとその友達に話したら、ちゃんと告白して確認してきなよって言われて連れてこられたけど、キャメロンさんと会う前に倒れちゃった。えーっと、好きです?」
「スッゴイ雑ナ告白ダナア!」
「だって、もともとここに来る予定も告白する予定もなかったから、何言おうか全然考えてなかった」
詩人みたいに気の利いた言い回しができたらなあと考えながら、誤魔化すように笑うとキャメロンさんは顔を赤くして口をもごもごさせていた。こういう惚れた腫れた系に慣れている人だと思っていたので、予想外の反応にこちらまで恥ずかしい。なので、少し視線を泳がせておく。それから、イエスともノーとも答えが返って来ていないことを思い出して、キャメロンさんの方はわたしのことをどう思っているのか聞いてみた。
「キャメロンさんはわたしのこと、好き?」
「好ジャナカッタラ、肩モ膝モ貸シテヤラナイシ、ワザワザベンチマデ起コシニ行カナイヨ」
わざわざ言わせんな、と言いたげな顔で、ぶっきらぼうに答えが返ってきた。告白成功。しかし、少し不満が残る。
「キャメロンさんが告白してくれたら、わたしも勘違いで失恋することなかったんだけどな~」
じ〜っと顔を見つめると、顔を赤くしたキャメロンさんはこちらから視線を外した。
「……キミ、今何歳ダッケ」
「19? だったかな~」
「ハア……ナナシハマダ未成年デ、俺ハ成人済ミ。意味ワカル?」
「う~ん、なんだろ。でも、キャメロンさんとわたし、6、7歳しか変わらないよ」
「成人シテタラソコマデ気ニナラナイ年ノ差ダケド、未成年者ト成人ジャ重ミガ違ウワケ! ダカラ、ナナシガ成人スルマデ待ッテヨウト思ッテタンダケド」
「あれま。キャメロンさん、見た目とか口調とかチャラそうなのに、意外と気を使うタイプなんだね~」
「キミ、本当ニ俺ノコト好キナンダヨネ?」
またキャメロンさんに疑いの眼差しを向けられてしまう。チャラそうだしいろいろな女の人にひっかけてそうだと思ったことはあったりなかったりしたけれど、さっきの告白に嘘偽りを入れたつもりはない。本当だよ〜と笑うと、本当カナアと返ってきたが、ふっと軽く笑っていたので信じてもらえたようだ。
「キャメロンさんは、前にここでわたしの絵を褒めてくれたこと覚えてる?」
「……覚エテルヨ。カナワタウンカラ戻ッテ来ル電車ヲ降リテ、倒レタトキノデショ」
「あのときキャメロンさんに褒めてもらえたこと、すごく嬉しかったんだ。それで、キャメロンさんが運転士さんだけじゃなくて、バトルの方に配置されることもあるって言ってたから、バトルサブウェイに挑戦することにしたんだ~」
わたし、それまでバトルにあまり関心なかったし、乗り物酔いがひどいから極力乗り物は避けてたんだよ、と笑うとキャメロンさんは手帳を取り出した。開いて中に挟んでいたものを見せる。あのとき渡した絵が縮小されてポストカードのようになっていた。
「アノトキモラッタ絵、持チ歩イテルンダヨ。流石ニ原画ノ方ハ家ニ置イテアルケド」
「キャメロンさん、やることかわいいな~」
「ウルサイナ」
顔を赤くしたキャメロンさんはポストカードをまた手帳に挟むとポケットにしまった。あのときの絵を取っておいてくれてたらいいな〜としか思っていなかったので、わざわざ印刷して持ち歩いていたことを知ると嬉しくなる。
「わたし、無機物より有機物の方が好きだった。森だったり滝だったり、自然な場所が好き。だから今まで有機物をモチーフにした絵ばかり描いてた。でも、キャメロンさんはここで働いてるし、きっと電車みたいな無機物が好きなんだろうな~って思ったから、そういったものをモチーフに取り入れることも多くなったんだ。好きな人の好きなものは、やっぱり好きになりたいじゃん。好きの意味がライクじゃなくてラブなのは最近になって知ったけどね~」
ふふふ〜と笑ったら照れ隠しなのかキャメロンさんにデコピンされてしまった。
「バカ」
「病人にデコピンすることないと思うんだけどなあ」
ひどいなあ、と額を押さえつつ、メイちゃんとヒュウくんに報告しないといけないなと笑う。それから、家にキャメロンさんをイメージして描いた絵が置いてあるので、持ってきてまた見せてあげよう。今度の作品も気に入ってもらえるといいな、と思う。
「ココハ、ギアステーションノ医務室」
目を覚ましてなんとなく見覚えのある天井を見つめているとキャメロンさんの声が聞こえたので、前にもこんなやり取りをしたなあと思い出す。キャメロンさんの隣にはぐすぐすと目を擦りながら泣いているメイちゃんが立っていた。
「ナナシさん、ごめんなさい。わたしが、わたしが無理やり、ナナシさんが具合悪かったの、知らなくて」
「メイちゃん、泣かないでよ〜」
確かに押し込まれたときは御無体な、なんて思ったけれど、そのあとに続けると決めたのは自分の意志だ。メイちゃんのせいではない。
「別に具合が悪かったわけじゃないんだ。ちょっとね、わたし乗り物酔いがひどいんだ」
ふふふ〜と笑ってくるくると両手を見せるとメイちゃんの涙が少し止まる。キャメロンさんも不思議そうな顔を見せた。
「いつもは酔い止めの薬を飲んで、乗り物酔い防止のリストバンドを着けて電車に乗るんだけど、バトルサブウェイに挑戦する予定がなかったから家に忘れてきちゃった」
その言葉にキャメロンさんは、ああ、というような顔を見せた。いつも着けている気合のリストバンドがないことに気づいたようだ。それからため息をつくと、少しだけメイちゃんに退席してもらうよう頼んでいた。
キャメロンさんが太ももの上で頬杖をついて丸椅子に座る。わたしが上体を起こそうとしたら、寝テロ、と怒られた。
「イツモ無理シテ来テタワケ?」
「ちょっと頑張ってたよ~」
「イツモベンチデ寝テタノ、酔ッテ動ケナカッタカラ?」
「寝ると少し楽になるんだ。もうそこそこ元気だよ~」
心配されそうだからキャメロンさんには乗り物酔いがひどいことを知られたくなかったけれど、バレてしまった以上仕方がない。キャメロンさんとバトルするときや一緒に電車に乗るときは安心するからかあまり酔わなかったよ、ただ降りたあとはやっぱり目の前がちかちかする、他の鉄道員さんとバトルのときは酔っててあまり本気が出せなかった、と言うと、彼は少し複雑そうな顔を見せた。それから大きくため息をつくと、口を開いた。今まで見た中で1番大きなため息かもしれない。
「……ナナシ、失恋シタッテ、誰ニ」
やはりカズマサさんはキャメロンさんにも言っていたようだ。クラウドさんに伝わっていた時点でそうだろうなとは思っていたけれど、失恋相手にそれを聞かれるのは少し具合が悪い。
「キャメロンさんには関係ないじゃん。全く、カズマサさんは口が軽いな~」
冗談っぽく言うと、キャメロンさんはムッとした表情を見せた。なので、ちょっと言い方がまずかったかなと思っていると、キャメロンさんはまた口を開いた。少しだけ顔が赤い。
「関係アルカラ聞イテンノ。イッツモ言ウコト聞カナイデ、人ノ肩ニ保タレタリ膝ノ上デ寝タリ。ベンチデ寝テルトコロヲ起コスト、アレマ、トカ言ッテ笑ッテテ。ナノニ最近、7両目デ待ッテテモ来ナクナッテ、ベンチデ寝テルトコロモ見ナクナッテ。仕事ノ方デ忙シイノカト思ッタラ、失恋シタカラトカナニソレ。ホント、芸術家ッテ自由人。ヒトリデ浮カレテタノ、バカミタイ」
キャメロンさんの最後の言葉に少し違和感を覚える。
「あれ? もしかしてキャメロンさん、彼女さんいない? この間一緒にいた女の人は違う人?」
「俺、フリーダケド。誰ノコト言ッテルノカ知ラナイケド、ソレタブン他ノ職員ノ彼女ダヨ」
他の鉄道員さんの交際関係はあまり知らないけれど、確かに彼女さんや奥さんのいる人がいてもおかしくない。それに、いくらキャメロンさんがチャラそうな見た目をしているからって、同じ職場の人の彼女さんにちょっかいかけたりはしないだろう。なので試しにあのとき見た人をクロッキー帳にさらさらと描いたら、アノヤロウ、と怒ったので本当に他の鉄道員さんの彼女さんだったようだ。ということは、まだわたしにチャンスは残っているらしい。
「あれま、わたしの勘違い。じゃあまだ失恋してなかったんだ~」
「ハア? ナニソレ」
キャメロンさんは意味がわからないと言いたげな表情をしていた。
「てっきりキャメロンさんに彼女さんがいるもんだと思ってたから、告白する前に振られちゃったな~って。それをメイちゃんとその友達に話したら、ちゃんと告白して確認してきなよって言われて連れてこられたけど、キャメロンさんと会う前に倒れちゃった。えーっと、好きです?」
「スッゴイ雑ナ告白ダナア!」
「だって、もともとここに来る予定も告白する予定もなかったから、何言おうか全然考えてなかった」
詩人みたいに気の利いた言い回しができたらなあと考えながら、誤魔化すように笑うとキャメロンさんは顔を赤くして口をもごもごさせていた。こういう惚れた腫れた系に慣れている人だと思っていたので、予想外の反応にこちらまで恥ずかしい。なので、少し視線を泳がせておく。それから、イエスともノーとも答えが返って来ていないことを思い出して、キャメロンさんの方はわたしのことをどう思っているのか聞いてみた。
「キャメロンさんはわたしのこと、好き?」
「好ジャナカッタラ、肩モ膝モ貸シテヤラナイシ、ワザワザベンチマデ起コシニ行カナイヨ」
わざわざ言わせんな、と言いたげな顔で、ぶっきらぼうに答えが返ってきた。告白成功。しかし、少し不満が残る。
「キャメロンさんが告白してくれたら、わたしも勘違いで失恋することなかったんだけどな~」
じ〜っと顔を見つめると、顔を赤くしたキャメロンさんはこちらから視線を外した。
「……キミ、今何歳ダッケ」
「19? だったかな~」
「ハア……ナナシハマダ未成年デ、俺ハ成人済ミ。意味ワカル?」
「う~ん、なんだろ。でも、キャメロンさんとわたし、6、7歳しか変わらないよ」
「成人シテタラソコマデ気ニナラナイ年ノ差ダケド、未成年者ト成人ジャ重ミガ違ウワケ! ダカラ、ナナシガ成人スルマデ待ッテヨウト思ッテタンダケド」
「あれま。キャメロンさん、見た目とか口調とかチャラそうなのに、意外と気を使うタイプなんだね~」
「キミ、本当ニ俺ノコト好キナンダヨネ?」
またキャメロンさんに疑いの眼差しを向けられてしまう。チャラそうだしいろいろな女の人にひっかけてそうだと思ったことはあったりなかったりしたけれど、さっきの告白に嘘偽りを入れたつもりはない。本当だよ〜と笑うと、本当カナアと返ってきたが、ふっと軽く笑っていたので信じてもらえたようだ。
「キャメロンさんは、前にここでわたしの絵を褒めてくれたこと覚えてる?」
「……覚エテルヨ。カナワタウンカラ戻ッテ来ル電車ヲ降リテ、倒レタトキノデショ」
「あのときキャメロンさんに褒めてもらえたこと、すごく嬉しかったんだ。それで、キャメロンさんが運転士さんだけじゃなくて、バトルの方に配置されることもあるって言ってたから、バトルサブウェイに挑戦することにしたんだ~」
わたし、それまでバトルにあまり関心なかったし、乗り物酔いがひどいから極力乗り物は避けてたんだよ、と笑うとキャメロンさんは手帳を取り出した。開いて中に挟んでいたものを見せる。あのとき渡した絵が縮小されてポストカードのようになっていた。
「アノトキモラッタ絵、持チ歩イテルンダヨ。流石ニ原画ノ方ハ家ニ置イテアルケド」
「キャメロンさん、やることかわいいな~」
「ウルサイナ」
顔を赤くしたキャメロンさんはポストカードをまた手帳に挟むとポケットにしまった。あのときの絵を取っておいてくれてたらいいな〜としか思っていなかったので、わざわざ印刷して持ち歩いていたことを知ると嬉しくなる。
「わたし、無機物より有機物の方が好きだった。森だったり滝だったり、自然な場所が好き。だから今まで有機物をモチーフにした絵ばかり描いてた。でも、キャメロンさんはここで働いてるし、きっと電車みたいな無機物が好きなんだろうな~って思ったから、そういったものをモチーフに取り入れることも多くなったんだ。好きな人の好きなものは、やっぱり好きになりたいじゃん。好きの意味がライクじゃなくてラブなのは最近になって知ったけどね~」
ふふふ〜と笑ったら照れ隠しなのかキャメロンさんにデコピンされてしまった。
「バカ」
「病人にデコピンすることないと思うんだけどなあ」
ひどいなあ、と額を押さえつつ、メイちゃんとヒュウくんに報告しないといけないなと笑う。それから、家にキャメロンさんをイメージして描いた絵が置いてあるので、持ってきてまた見せてあげよう。今度の作品も気に入ってもらえるといいな、と思う。