本編
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「ナナシちゃん、恋をしてるね」
「恋? してるのかな〜」
「絵を見ててわかるよー」
アーティさんのアトリエで手伝いをしていたら、突然「恋をしてるね」なんて言われた。何を見て判断したのかと思ったら、絵を見ればわかるとのこと。それから純情ハートがなんたらかんたら言い出したので、途中は聞き流してしまった。芸術家は一度語り出すと面倒なので、聞いているふりをしながら作業を続ける。
「有機的なものは前から生き生きとした表現だったけど、最近のは無機的なものにもそれ特有の鋭さの中に命が吹き込まれているような表現がされてていいと思うよー」
わたしも一応画家の端くれだけど、芸術家の言い回しはよくわからない。命ねえ、と思いながらアーティさんの感想にちょうど良さそうな答えを探した。
「森とか滝とか自然なものが好きだったけど、それ以外のものにも目を向けようと思ったんだ〜」
「最近、ギアステーションに通ってるもんね。絵を描いて、バトルして、恋しちゃって。いろいろ発見があるでしょ?」
「う〜ん。まあ、発見はいろいろあるかも。アーティさんみたいにバトルするようになったからかなあ」
バトルサブウェイに挑戦するようになった時期から、美学校の先生に怒られることが少なくなった。アーティさんはよく、絵を描いてバトルしての繰り返しの中でも多くの発見があると言っていた。わたしはもともとバトルに興味を持っていなかったので、そうなんだ、くらいにしか思っていなかったけれど、実際にやってみると発見ばかりでわたしは物事を全く見ていなかったんだなあ、とひしひしと感じた。
ギアステーション通いを始めたのは、キャメロンさんに会いに行くためだった。わたしの絵を褒めてくれた第1号さん。先生に怒られっぱなしだった絵を褒めてくれた。それだけで嬉しかったけれど、どうして絵を描くのかも考えさせてくれた。キャメロンさんがいなかったら、わたしは今頃きっと美学校を留年していただろうし、アーティさんのアトリエで手伝いをすることもなかっただろうし、スペースを借りて個展を開かせてもらう機会も得られなかったと思う。
キャメロンさんのことは好き。それは自分でもわかる。ただ、アーティさんの言う恋なのかはよくわからない。肩や膝を借りて寝かせてもらったときはラッキーとしか思わないし、かわいいと言われたときはうれしいけど、チャラそうだし他の人にも言っているんだろうなあと醒めた感想が出る。ドキドキしたこともないし、何かでズガドーンとショックを受けたこともない。ラブじゃなくてライクなんだろうか。少し考えながら、アーティさんの手伝いを終えるとヤグルマの森で絵を描くことにした。
せっかくだし、キャメロンさんを構成するもので絵を描こうと思う。制服の色は緑だけど、キャメロンさんのイメージカラーは黄色な気がする。それから、ギアステーションで働いているから、電車、車輪、ダイヤ、鉄、鋼、電気、地下……戦闘に出すポケモンは他の鉄道員さんと同じようにはがねタイプとでんきタイプが多いけど、わたしと対戦するときはいつもジャローダを出すので、植物、高貴、しなやか……考えてみると、構成要素が多い。これをまとめるのは大変だなあと思いながらパステルを使う。しかし、森の中で描いていることもあって、作業はかなり進んだ。あとはフィキサチーフをかけるだけだ。けれども家に置きっ放しだったので一度家に帰る。それから、ギアステーションに行ってバトルサブウェイに挑戦しよう。ライブキャスターの電源を入れると15時32分と表示されて、いつも16時過ぎに挑戦しに行くのでちょうどいい時間だった。
腹が減っては戦はできぬということで今日は売店でおにぎりを買い、気合のリストバンドを2つ着けて、7両目まで勝てるようにとおまじないを使う。そして、いざ挑戦しようと思ったら遠くでキャメロンさんが仲良く女の人と喋っているところを見かけた。ボディタッチが多くて、何を喋っているのかはわからないけれど、ああ彼女さんなんだろうなとわざわざ聞かなくてもわかる。
彼女さんはとてもかわいくておしゃれな人だった。それから、さっきキャメロンさんを形作る構成要素としてリストに書き出した『黄色』が映える人でもあった。そのふたりの姿を見ていたら、胃の中がぐるぐるとかき混ぜられるような気分になってくる。ドキドキしたことも、何かズガドーンとショックを受けたこともないとないと考えていたばかりなのに、今まさにものすごくショックを受けるという発見をした。悲しいが、この衝撃も絵のモチーフにできるかもしれない。
キャメロンさんのことをライクじゃなくてラブという意味で好きだということに気がついた。そして、同時に彼女さんがいたということを知り、恋をした瞬間に失恋をした。
気合のリストバンドをそっと外す。今日からしばらくギアステーション通いをやめることとする。
「恋? してるのかな〜」
「絵を見ててわかるよー」
アーティさんのアトリエで手伝いをしていたら、突然「恋をしてるね」なんて言われた。何を見て判断したのかと思ったら、絵を見ればわかるとのこと。それから純情ハートがなんたらかんたら言い出したので、途中は聞き流してしまった。芸術家は一度語り出すと面倒なので、聞いているふりをしながら作業を続ける。
「有機的なものは前から生き生きとした表現だったけど、最近のは無機的なものにもそれ特有の鋭さの中に命が吹き込まれているような表現がされてていいと思うよー」
わたしも一応画家の端くれだけど、芸術家の言い回しはよくわからない。命ねえ、と思いながらアーティさんの感想にちょうど良さそうな答えを探した。
「森とか滝とか自然なものが好きだったけど、それ以外のものにも目を向けようと思ったんだ〜」
「最近、ギアステーションに通ってるもんね。絵を描いて、バトルして、恋しちゃって。いろいろ発見があるでしょ?」
「う〜ん。まあ、発見はいろいろあるかも。アーティさんみたいにバトルするようになったからかなあ」
バトルサブウェイに挑戦するようになった時期から、美学校の先生に怒られることが少なくなった。アーティさんはよく、絵を描いてバトルしての繰り返しの中でも多くの発見があると言っていた。わたしはもともとバトルに興味を持っていなかったので、そうなんだ、くらいにしか思っていなかったけれど、実際にやってみると発見ばかりでわたしは物事を全く見ていなかったんだなあ、とひしひしと感じた。
ギアステーション通いを始めたのは、キャメロンさんに会いに行くためだった。わたしの絵を褒めてくれた第1号さん。先生に怒られっぱなしだった絵を褒めてくれた。それだけで嬉しかったけれど、どうして絵を描くのかも考えさせてくれた。キャメロンさんがいなかったら、わたしは今頃きっと美学校を留年していただろうし、アーティさんのアトリエで手伝いをすることもなかっただろうし、スペースを借りて個展を開かせてもらう機会も得られなかったと思う。
キャメロンさんのことは好き。それは自分でもわかる。ただ、アーティさんの言う恋なのかはよくわからない。肩や膝を借りて寝かせてもらったときはラッキーとしか思わないし、かわいいと言われたときはうれしいけど、チャラそうだし他の人にも言っているんだろうなあと醒めた感想が出る。ドキドキしたこともないし、何かでズガドーンとショックを受けたこともない。ラブじゃなくてライクなんだろうか。少し考えながら、アーティさんの手伝いを終えるとヤグルマの森で絵を描くことにした。
せっかくだし、キャメロンさんを構成するもので絵を描こうと思う。制服の色は緑だけど、キャメロンさんのイメージカラーは黄色な気がする。それから、ギアステーションで働いているから、電車、車輪、ダイヤ、鉄、鋼、電気、地下……戦闘に出すポケモンは他の鉄道員さんと同じようにはがねタイプとでんきタイプが多いけど、わたしと対戦するときはいつもジャローダを出すので、植物、高貴、しなやか……考えてみると、構成要素が多い。これをまとめるのは大変だなあと思いながらパステルを使う。しかし、森の中で描いていることもあって、作業はかなり進んだ。あとはフィキサチーフをかけるだけだ。けれども家に置きっ放しだったので一度家に帰る。それから、ギアステーションに行ってバトルサブウェイに挑戦しよう。ライブキャスターの電源を入れると15時32分と表示されて、いつも16時過ぎに挑戦しに行くのでちょうどいい時間だった。
腹が減っては戦はできぬということで今日は売店でおにぎりを買い、気合のリストバンドを2つ着けて、7両目まで勝てるようにとおまじないを使う。そして、いざ挑戦しようと思ったら遠くでキャメロンさんが仲良く女の人と喋っているところを見かけた。ボディタッチが多くて、何を喋っているのかはわからないけれど、ああ彼女さんなんだろうなとわざわざ聞かなくてもわかる。
彼女さんはとてもかわいくておしゃれな人だった。それから、さっきキャメロンさんを形作る構成要素としてリストに書き出した『黄色』が映える人でもあった。そのふたりの姿を見ていたら、胃の中がぐるぐるとかき混ぜられるような気分になってくる。ドキドキしたことも、何かズガドーンとショックを受けたこともないとないと考えていたばかりなのに、今まさにものすごくショックを受けるという発見をした。悲しいが、この衝撃も絵のモチーフにできるかもしれない。
キャメロンさんのことをライクじゃなくてラブという意味で好きだということに気がついた。そして、同時に彼女さんがいたということを知り、恋をした瞬間に失恋をした。
気合のリストバンドをそっと外す。今日からしばらくギアステーション通いをやめることとする。