◇ハロウィン2019
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「おはようございます」
「おはよう、ナナシちゃん。今日はいつもと違う格好なんだね! ふたりとも魔女なのかな?」
ナナシちゃんは郵便屋さんの制服ではなく黒いワンピースを着て、帽子もとんがり帽を被っている。ペリッパーさんは軽く、マントを羽織っていた。
「ハロウィンですからね、配達員もそれっぽい格好をしています。はい、わたしからはキャンディです」
「ありがとう」
僕の手のひらにかわいらしいキャンディが転がった。今日は郵便物と一緒にお菓子も配るのかな? と思いながらカバンに入っているものを取り出そうとする前にナナシちゃんが口を開いた。
「どうせカズマサさんはお菓子を持ってないですよね」
「あ、ちょっと待って!」
僕の言葉を聞くより先に、ナナシちゃんは僕の被っていた帽子をひったくってローラーシューズで走り出した。それからくるりとこちらを向くと、「返してもらいたければ、わたしを見失わないよう一生懸命走ってくださいね」と言って再び走り出してしまった。いつもは僕の腕を掴んでいくけれど、今日は完全にひとりでナナシちゃんを追いかける状態だ。見失ったら道に迷ってしまうかもしれない。それだと困るので一生懸命走るが、はじめて腕を引っ張られたときに思ったのと同じように、ローラーシューズというものは意外とスピードが出る。一応、僕がついてきているかときどきこちらを振り向くけれど、姿を確認するとまた勢いよく走って行ってしまった。それを何度繰り返しただろうか。ギアステーションに着く頃には息も絶え絶えで体力は0、今にも死んでしまいそうだった。
息を切らしながら職員用通路を走っていくと、同僚に面白いものを見たというような目で見られた。いつもはナナシちゃんに腕を引っ張られて息を切らしているのに、制服は乱れ、帽子もなく、ひとりで息を切らしている僕の姿が面白いのだろう。
はあ、とため息をつく。体力値が0どころかマイナスになりそうだ。そう思っていると、事務所の方からナナシちゃんが戻ってきていた。すでに荷物を配達し終えてサインをもらい、次の配達地へ向かう予定らしい。「遅かったですね」と笑う彼女に、もう少し心配してくれてもいいのでは? と心の中で涙を流す。
「ひ、ひどい……あと一応、僕もお菓子持ってたんだけどな……」
「あ、そうだったんですね、すみません。わたしは次の配達があるので、帽子、返しますね。それでは」
「あ、ちょっと待ってってば……」
また僕の話を最後まで聞かずに彼女は行ってしまった。本当に気ままな子だ。そういうところが面白いけれど、ときどき、少しつらく感じる。本日二度目の大きなため息をつく。
返してもらった帽子を被ろうとして、1通の手紙が床に落ちた。拾い上げてみると丁寧な字で僕の名前が書かれている。差出人はナナシちゃんだ。少し息を整えてからゆっくりと封を開ける。すると、一行だけの文章が、丁寧な字で書かれていた。
『今日の夜、よかったら一緒に食事に行きませんか』
体力値、マイナスからプラスへと復活。素直じゃないというか、不器用というか、そういうところがかわいらしい。ときどき、少しつらく感じるけれど、本当に面白い子だと思う。
夕方、ナナシちゃんの配達が終わる頃にライブキャスターで連絡を入れよう。今日はハロウィンだから仕事も忙しいけれど、ナナシちゃんのことを考えれば頑張れそうな気がする。
「おはよう、ナナシちゃん。今日はいつもと違う格好なんだね! ふたりとも魔女なのかな?」
ナナシちゃんは郵便屋さんの制服ではなく黒いワンピースを着て、帽子もとんがり帽を被っている。ペリッパーさんは軽く、マントを羽織っていた。
「ハロウィンですからね、配達員もそれっぽい格好をしています。はい、わたしからはキャンディです」
「ありがとう」
僕の手のひらにかわいらしいキャンディが転がった。今日は郵便物と一緒にお菓子も配るのかな? と思いながらカバンに入っているものを取り出そうとする前にナナシちゃんが口を開いた。
「どうせカズマサさんはお菓子を持ってないですよね」
「あ、ちょっと待って!」
僕の言葉を聞くより先に、ナナシちゃんは僕の被っていた帽子をひったくってローラーシューズで走り出した。それからくるりとこちらを向くと、「返してもらいたければ、わたしを見失わないよう一生懸命走ってくださいね」と言って再び走り出してしまった。いつもは僕の腕を掴んでいくけれど、今日は完全にひとりでナナシちゃんを追いかける状態だ。見失ったら道に迷ってしまうかもしれない。それだと困るので一生懸命走るが、はじめて腕を引っ張られたときに思ったのと同じように、ローラーシューズというものは意外とスピードが出る。一応、僕がついてきているかときどきこちらを振り向くけれど、姿を確認するとまた勢いよく走って行ってしまった。それを何度繰り返しただろうか。ギアステーションに着く頃には息も絶え絶えで体力は0、今にも死んでしまいそうだった。
息を切らしながら職員用通路を走っていくと、同僚に面白いものを見たというような目で見られた。いつもはナナシちゃんに腕を引っ張られて息を切らしているのに、制服は乱れ、帽子もなく、ひとりで息を切らしている僕の姿が面白いのだろう。
はあ、とため息をつく。体力値が0どころかマイナスになりそうだ。そう思っていると、事務所の方からナナシちゃんが戻ってきていた。すでに荷物を配達し終えてサインをもらい、次の配達地へ向かう予定らしい。「遅かったですね」と笑う彼女に、もう少し心配してくれてもいいのでは? と心の中で涙を流す。
「ひ、ひどい……あと一応、僕もお菓子持ってたんだけどな……」
「あ、そうだったんですね、すみません。わたしは次の配達があるので、帽子、返しますね。それでは」
「あ、ちょっと待ってってば……」
また僕の話を最後まで聞かずに彼女は行ってしまった。本当に気ままな子だ。そういうところが面白いけれど、ときどき、少しつらく感じる。本日二度目の大きなため息をつく。
返してもらった帽子を被ろうとして、1通の手紙が床に落ちた。拾い上げてみると丁寧な字で僕の名前が書かれている。差出人はナナシちゃんだ。少し息を整えてからゆっくりと封を開ける。すると、一行だけの文章が、丁寧な字で書かれていた。
『今日の夜、よかったら一緒に食事に行きませんか』
体力値、マイナスからプラスへと復活。素直じゃないというか、不器用というか、そういうところがかわいらしい。ときどき、少しつらく感じるけれど、本当に面白い子だと思う。
夕方、ナナシちゃんの配達が終わる頃にライブキャスターで連絡を入れよう。今日はハロウィンだから仕事も忙しいけれど、ナナシちゃんのことを考えれば頑張れそうな気がする。