◇ハロウィン2019
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ギアステーションから出てきた彼に手を振ったら、とても驚いた顔をしていた。まさか、わたしがこの地方に来ていたとは思っていなかったのだろう。なぜなら、ここに来ると一度も連絡を入れてなかったから。タッタッタ、と彼のところに駆け寄ると、嬉しそうな、困ったような、なんとも言えない表情をしていた。
「トリックオアトリート、ノボリさん!」
「ナナシ様、こちらにいらしていたのですね。それでは、このロリポップを」
わたしが手を差し出すと、ノボリさんはロリポップをわたしの手に乗せた。
「なんだ、お菓子持ってたんですね」
「ギアステーションのイベントで配っていましたので。それではわたくしからも、trick or treat」
「わたしからは、マカロンです」
「残念、ナナシ様もお持ちでしたか」
現在わたしが旅をしている地方では有名なお菓子だったのでマカロンを手渡すと、ノボリさんはふふっと軽く笑った。
「もしお菓子を持っていなかったら、どんなイタズラをするつもりだったんですか?」
「さて、なんでしょうね。ナナシ様は?」
「特に決めていませんでした」
「お互い無計画でしたか」
何も考えていなかったのに、手垢のついたセリフを吐いて相手の返事を待つおかしさにふたりで笑い合った。どんなことをしたら、ノボリさんにとってイタズラになったのかな。もしかしたら、何も言わずに突然現れたことが、一番のサプライズで一番のイタズラだったのかもしれない。
「ナナシ様はいつまでイッシュ地方に滞在する予定ですか?」
「明日の朝には出るつもりです。トリックオアトリートって言うためだけにここに来たので」
「相変わらず気ままな方で。連絡も全くつきませんし」
「旅をした方がいいと後押ししたのはノボリさんですよ。それに、他の地方だとライブキャスターが使えないんです。でもこうやって、ネイティのテレポートを使って会いに来ますから!」
「ネイティも大変ですね。こんなにも小さな体で、遠く離れたところまで移動を任せられるのですから」
わたしの頭にちょこんと乗っているネイティを軽くなでると、トゥトゥ、と小さく鳴いた。
他の地方からここまでテレポートをしてもらうのはなかなか力を使うと思う。だけど、ネイティも楽しそうなのでそれに甘えてお願いしている。昔は遠くまでの移動をかか様に頼んでいたけれど、そのかか様は元いるべき場所へと戻っていった。これからはわたしたちだけで頑張らないといけない。
「そういえば、ノボリさんから贈られたヒトモシ、ついこの間ランプラーに進化したんです」
「おや。それでは、シャンデラになる日も近いかもしれませんね」
「ランプラーが進化したいと決心をしたら、そのときはやみのいしを使ってあげようと思います」
かか様と入れ替わりでやってきたヒトモシ。遠く離れた地にいるノボリさんのことを考えながら一緒にバトルをしたり、遊んだり、ときにはケンカしたりしている。それでもちょっぴり、恋しくなることがある。
「ノボリさん、あったかい」
ぴょん、と飛びついてコートの中に手を入れる。抱きつくと温かくて、胸元に耳を当てると、とくん、とくんと優しい音が聞こえる。ノボリさんも軽くわたしを抱きしめてくれた。けれども、少しだけため息をついた。
「ナナシ様、だいぶ体が冷えていますね……いつから待っていらしたのですか?」
「20時くらいから。ギアステーションでイベントをやっていたので、それを見ながらノボリさんが出てくるのを待っていました」
「女性が体を冷やすのはよくありませんよ。それに、こんな夜遅くまで外を出歩くのも感心できません」
「気をつけます」
やれやれ、全く、というようにノボリさんは首を横に振った。時計はもう23時を回っている。場所によっては補導されてしまう時間だ。わたしにとって年齢という壁は、まだまだ高いジャマなものだ。
「……いろいろな地方を旅するのは楽しいけど、ときどき、さびしいなって思います。だから、今日はハロウィンだし、それを口実にここへ来ちゃいました」
体を預けながらぽつりとつぶやくと、ノボリさんはわたしの肩に手を置き少しだけ体を離した。わたしも顔を上に向けて彼の目を見た。とても優しい目をしている。
「わたくしは、いつでもナナシ様の帰りをお待ちしておりますから」
「ありがとうございます。早く、このリングの似合うオトナになりたいな」
ノボリさんからもらった、ペンダント。チェーンにはリングがつけられていて、ノボリさんも同じものを首に下げている。このリングが似合うオトナになるまで、わたしはいろいろな地方を旅しようと決めた。わたしの人生時計はまだ始発の電車も走っていない5時前。普段のわたしならまだ起きていない時間。将来のことを考える時間がたくさんあって、どんなことにも挑戦できる時間も残されていて、いろいろなものを見て回って経験する時間もたくさんある。そして、このリングにふさわしいオトナになったとき、ふたりで指にはめるのだ。
「焦らずとも、そのときはいずれやってきますよ」
ノボリさんは優しく笑った。
「ノボリさん、明日の朝、イッシュ地方を出る前にまた会いに来てもいいですか?」
「ええ、もちろんです。それでは、おやすみなさい」
ノボリさんは優しく抱きしめてくれた。きっとオトナだったらキスをしたり、何か、なんだろう、オトナっぽいことをするんだろうな。わたしの場合、あと何年だろう。だけどそのときが来るまで、わたしはこのリングを首に下げておくんだ。
「トリックオアトリート、ノボリさん!」
「ナナシ様、こちらにいらしていたのですね。それでは、このロリポップを」
わたしが手を差し出すと、ノボリさんはロリポップをわたしの手に乗せた。
「なんだ、お菓子持ってたんですね」
「ギアステーションのイベントで配っていましたので。それではわたくしからも、trick or treat」
「わたしからは、マカロンです」
「残念、ナナシ様もお持ちでしたか」
現在わたしが旅をしている地方では有名なお菓子だったのでマカロンを手渡すと、ノボリさんはふふっと軽く笑った。
「もしお菓子を持っていなかったら、どんなイタズラをするつもりだったんですか?」
「さて、なんでしょうね。ナナシ様は?」
「特に決めていませんでした」
「お互い無計画でしたか」
何も考えていなかったのに、手垢のついたセリフを吐いて相手の返事を待つおかしさにふたりで笑い合った。どんなことをしたら、ノボリさんにとってイタズラになったのかな。もしかしたら、何も言わずに突然現れたことが、一番のサプライズで一番のイタズラだったのかもしれない。
「ナナシ様はいつまでイッシュ地方に滞在する予定ですか?」
「明日の朝には出るつもりです。トリックオアトリートって言うためだけにここに来たので」
「相変わらず気ままな方で。連絡も全くつきませんし」
「旅をした方がいいと後押ししたのはノボリさんですよ。それに、他の地方だとライブキャスターが使えないんです。でもこうやって、ネイティのテレポートを使って会いに来ますから!」
「ネイティも大変ですね。こんなにも小さな体で、遠く離れたところまで移動を任せられるのですから」
わたしの頭にちょこんと乗っているネイティを軽くなでると、トゥトゥ、と小さく鳴いた。
他の地方からここまでテレポートをしてもらうのはなかなか力を使うと思う。だけど、ネイティも楽しそうなのでそれに甘えてお願いしている。昔は遠くまでの移動をかか様に頼んでいたけれど、そのかか様は元いるべき場所へと戻っていった。これからはわたしたちだけで頑張らないといけない。
「そういえば、ノボリさんから贈られたヒトモシ、ついこの間ランプラーに進化したんです」
「おや。それでは、シャンデラになる日も近いかもしれませんね」
「ランプラーが進化したいと決心をしたら、そのときはやみのいしを使ってあげようと思います」
かか様と入れ替わりでやってきたヒトモシ。遠く離れた地にいるノボリさんのことを考えながら一緒にバトルをしたり、遊んだり、ときにはケンカしたりしている。それでもちょっぴり、恋しくなることがある。
「ノボリさん、あったかい」
ぴょん、と飛びついてコートの中に手を入れる。抱きつくと温かくて、胸元に耳を当てると、とくん、とくんと優しい音が聞こえる。ノボリさんも軽くわたしを抱きしめてくれた。けれども、少しだけため息をついた。
「ナナシ様、だいぶ体が冷えていますね……いつから待っていらしたのですか?」
「20時くらいから。ギアステーションでイベントをやっていたので、それを見ながらノボリさんが出てくるのを待っていました」
「女性が体を冷やすのはよくありませんよ。それに、こんな夜遅くまで外を出歩くのも感心できません」
「気をつけます」
やれやれ、全く、というようにノボリさんは首を横に振った。時計はもう23時を回っている。場所によっては補導されてしまう時間だ。わたしにとって年齢という壁は、まだまだ高いジャマなものだ。
「……いろいろな地方を旅するのは楽しいけど、ときどき、さびしいなって思います。だから、今日はハロウィンだし、それを口実にここへ来ちゃいました」
体を預けながらぽつりとつぶやくと、ノボリさんはわたしの肩に手を置き少しだけ体を離した。わたしも顔を上に向けて彼の目を見た。とても優しい目をしている。
「わたくしは、いつでもナナシ様の帰りをお待ちしておりますから」
「ありがとうございます。早く、このリングの似合うオトナになりたいな」
ノボリさんからもらった、ペンダント。チェーンにはリングがつけられていて、ノボリさんも同じものを首に下げている。このリングが似合うオトナになるまで、わたしはいろいろな地方を旅しようと決めた。わたしの人生時計はまだ始発の電車も走っていない5時前。普段のわたしならまだ起きていない時間。将来のことを考える時間がたくさんあって、どんなことにも挑戦できる時間も残されていて、いろいろなものを見て回って経験する時間もたくさんある。そして、このリングにふさわしいオトナになったとき、ふたりで指にはめるのだ。
「焦らずとも、そのときはいずれやってきますよ」
ノボリさんは優しく笑った。
「ノボリさん、明日の朝、イッシュ地方を出る前にまた会いに来てもいいですか?」
「ええ、もちろんです。それでは、おやすみなさい」
ノボリさんは優しく抱きしめてくれた。きっとオトナだったらキスをしたり、何か、なんだろう、オトナっぽいことをするんだろうな。わたしの場合、あと何年だろう。だけどそのときが来るまで、わたしはこのリングを首に下げておくんだ。
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