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「キャメロンさんに好きって言ってもらいたいな〜」
「……罰ゲーム?」
わたしの言葉に、キャメロンさんはため息をついた。
ガタン、ガタンと揺れる、ふたりだけの空間。7両目のバトルを終えたこの電車は、ライモンシティに向かっている。
いつものように疑いの目を向けられて、ちがう、と首を横に振った。
「今日、ヒウンシティでカップルを見たんだ〜」
「ソレデ?」
「昼間なのに、ビルの陰で『好き』って。ビジネスマンも、結構大胆だね〜」
カップルが「好き」を言い合うのはおかしくない。わたしは、カップルとはそういう生き物だと思っている。でも、『ビジネスマン』が『外』で言っていたことに、へえ〜となった。
意外と人目を気にしないんだな。そう思いながら描いた絵を見せたら、少しだけ引かれた。
「ソウイウノ、見テナイデ黙ッテ立チ去リナヨ。テカ、何デ絵ヲ描イテルノ」
「モデルにちょうどいいと思ったんだ〜」
「……ナナシダッテ、ソウイウトコロ、見ラレタラ嫌デショ」
「どうだろ? あんまり言われたことないから」
キャメロンさんに好きだと言われたのは、医務室での告白くらいだ。他の場面でその言葉を聞いた覚えはない。
別に、「好き」の数で恋愛の本気度が変わるとは思わない。ただ、幸せそうなふたりの絵が描けたので、少し羨ましくなった。わたしも言ってもらいたいな。なんとなくそう思っただけ。
窓にはわたしたちの姿が映っている。キャメロンさんの肩に頭を預けるわたしと、つまらなそうな表情で足を組んで座る彼。
「好きって言ってもらえたら嬉しいな〜」
視線を窓からキャメロンさんへと移した。こうしたところで、また冷ややかな目をされるだけなのはわかっている。見た目の割に、成人がどうとか、未成年がどうとか気にする人だ。なにかしら理由をつけて断るだろう。
……そう思っていたから、「好キ。愛シテルヨ」と返ってきて驚いた。
「わあ、チャラそうポイント、5ポイント追加」
思わず出た言葉に、急いで口をふさぐ。自分からお願いしておいて、なんて失礼なやつだろう。でも、『嬉しい』よりも先に『言い慣れてそう』が勝った。おまけの「愛してるよ」効果だろうか。さらっと言われたからだろうか。なんというか、チャラそう。
そんなキャメロンさんは『言わなきゃよかった』と言いたげな表情をしていた。眉間にしわをよせて、クルマユのようなジト目でこちらを見ている。とりあえず、ニコニコしてごまかしておこう。
「ソノ、『チャラソウポイント』ッテ何」
「う〜ん、なんだろう。キャメロンさんがチャラそうな言動をしたときにつけるポイントかな」
「……何ニ使ウノ?」
「特に使い道はないと思う。ただ貯めてるだけ」
「何ソレ。芸術家ノ考エルコトハ、難シイネ」
はあ、と盛大にため息をついている。普段からため息をつくタイプなのだろうか。
「キャメロンさん、わたしと一緒にいて楽しい?」
寄りかかっていた体をしっかり伸ばし、姿勢を整える。それからキャメロンさんの目を見つめると、驚いたのかパチパチと忙しく瞬きをしていた。
「あれま、固まっちゃった」
起きて、起きて。そうやって彼の太ももをペチペチと叩いていたら、手をつかまれた。いつも手袋で隠れているからわかりづらいけれど、わたしをつかまえている彼の手は大きくてゴツゴツしている。男の人の手だ。
そういえば、今まで手を繋いだことはなかったかもしれない。なんとなく、不思議な気分だった。
「……偶ニ、ネガティブナコト言ウノ、何ナノ」
手を繋ぐとこんな気持ちになるんだな。
そんなことを考えるわたしとは反対に、キャメロンさんは少し悲しそうな目をしていた。なにか、地雷を踏んでいたらしい。
「俺ノコト、信用デキナイ?」
「ん〜……信用はしてるけど、なんで?」
「……遊ンデルッテ、思ッテルンジャナイノ?」
「うん」
「遊ンデナイカラネ、今ハ!」
キャメロンさんは、急に大声を出して否定した。そこそこ威力のあるデコピンを添えて。
かと思えば、「昔ハ、ソウイウコト、アッタカモシレナイケド……」と、ばつが悪そうな声でわたしの額を軽くなでた。
「ナナシ、人ヲ好キニナルノ、初メテって言ッテタカラ」
「ライクはあるけど、ラブは初めてだね〜」
「……アア、調子狂ウナア、モウ」
《ご乗車ありがとうございました。終点……》ギアステーションに到着するアナウンスが車内に流れる。
「ナナシノコトガ好キダカラ、ドウ扱エバイイカ、ワカラナイ」
「本当?」
「疑ウナヨ。……本当ニ、ソウ思ッテルカラ」
ガタン、ガタンと揺れが小さくなり、電車は完全に止まった。わたしたちは、もうここから降りなければならない。それなのに、座席から立ち上がろうとしたら、キャメロンさんに手をつかまれた。
「……勝手ニ勘違イシテ、ドッカ行ッタリスルナヨ」
「うん、どこかへ行ったりしない。キャメロンさんのことが好きだから。こうやって手を繋げたのも、嬉しいな〜」
「ココジャ、アマリ繋ゲナイカラ。……今度ノ休ミ、ドコカ出掛ケヨウカ」
「デート? 楽しみだな〜」
恋愛初心者のわたしに合わせてくれていたなんて、本当にかわいい人。チャラそうなのに、少し不器用で、優しいところがやっぱり好きだ。
「……帰リ、外デコウイウカップル見ツケテモ、絵ヲ描イテナイデ立チ去リナヨ」
「はあい。気をつけます」
「……罰ゲーム?」
わたしの言葉に、キャメロンさんはため息をついた。
ガタン、ガタンと揺れる、ふたりだけの空間。7両目のバトルを終えたこの電車は、ライモンシティに向かっている。
いつものように疑いの目を向けられて、ちがう、と首を横に振った。
「今日、ヒウンシティでカップルを見たんだ〜」
「ソレデ?」
「昼間なのに、ビルの陰で『好き』って。ビジネスマンも、結構大胆だね〜」
カップルが「好き」を言い合うのはおかしくない。わたしは、カップルとはそういう生き物だと思っている。でも、『ビジネスマン』が『外』で言っていたことに、へえ〜となった。
意外と人目を気にしないんだな。そう思いながら描いた絵を見せたら、少しだけ引かれた。
「ソウイウノ、見テナイデ黙ッテ立チ去リナヨ。テカ、何デ絵ヲ描イテルノ」
「モデルにちょうどいいと思ったんだ〜」
「……ナナシダッテ、ソウイウトコロ、見ラレタラ嫌デショ」
「どうだろ? あんまり言われたことないから」
キャメロンさんに好きだと言われたのは、医務室での告白くらいだ。他の場面でその言葉を聞いた覚えはない。
別に、「好き」の数で恋愛の本気度が変わるとは思わない。ただ、幸せそうなふたりの絵が描けたので、少し羨ましくなった。わたしも言ってもらいたいな。なんとなくそう思っただけ。
窓にはわたしたちの姿が映っている。キャメロンさんの肩に頭を預けるわたしと、つまらなそうな表情で足を組んで座る彼。
「好きって言ってもらえたら嬉しいな〜」
視線を窓からキャメロンさんへと移した。こうしたところで、また冷ややかな目をされるだけなのはわかっている。見た目の割に、成人がどうとか、未成年がどうとか気にする人だ。なにかしら理由をつけて断るだろう。
……そう思っていたから、「好キ。愛シテルヨ」と返ってきて驚いた。
「わあ、チャラそうポイント、5ポイント追加」
思わず出た言葉に、急いで口をふさぐ。自分からお願いしておいて、なんて失礼なやつだろう。でも、『嬉しい』よりも先に『言い慣れてそう』が勝った。おまけの「愛してるよ」効果だろうか。さらっと言われたからだろうか。なんというか、チャラそう。
そんなキャメロンさんは『言わなきゃよかった』と言いたげな表情をしていた。眉間にしわをよせて、クルマユのようなジト目でこちらを見ている。とりあえず、ニコニコしてごまかしておこう。
「ソノ、『チャラソウポイント』ッテ何」
「う〜ん、なんだろう。キャメロンさんがチャラそうな言動をしたときにつけるポイントかな」
「……何ニ使ウノ?」
「特に使い道はないと思う。ただ貯めてるだけ」
「何ソレ。芸術家ノ考エルコトハ、難シイネ」
はあ、と盛大にため息をついている。普段からため息をつくタイプなのだろうか。
「キャメロンさん、わたしと一緒にいて楽しい?」
寄りかかっていた体をしっかり伸ばし、姿勢を整える。それからキャメロンさんの目を見つめると、驚いたのかパチパチと忙しく瞬きをしていた。
「あれま、固まっちゃった」
起きて、起きて。そうやって彼の太ももをペチペチと叩いていたら、手をつかまれた。いつも手袋で隠れているからわかりづらいけれど、わたしをつかまえている彼の手は大きくてゴツゴツしている。男の人の手だ。
そういえば、今まで手を繋いだことはなかったかもしれない。なんとなく、不思議な気分だった。
「……偶ニ、ネガティブナコト言ウノ、何ナノ」
手を繋ぐとこんな気持ちになるんだな。
そんなことを考えるわたしとは反対に、キャメロンさんは少し悲しそうな目をしていた。なにか、地雷を踏んでいたらしい。
「俺ノコト、信用デキナイ?」
「ん〜……信用はしてるけど、なんで?」
「……遊ンデルッテ、思ッテルンジャナイノ?」
「うん」
「遊ンデナイカラネ、今ハ!」
キャメロンさんは、急に大声を出して否定した。そこそこ威力のあるデコピンを添えて。
かと思えば、「昔ハ、ソウイウコト、アッタカモシレナイケド……」と、ばつが悪そうな声でわたしの額を軽くなでた。
「ナナシ、人ヲ好キニナルノ、初メテって言ッテタカラ」
「ライクはあるけど、ラブは初めてだね〜」
「……アア、調子狂ウナア、モウ」
《ご乗車ありがとうございました。終点……》ギアステーションに到着するアナウンスが車内に流れる。
「ナナシノコトガ好キダカラ、ドウ扱エバイイカ、ワカラナイ」
「本当?」
「疑ウナヨ。……本当ニ、ソウ思ッテルカラ」
ガタン、ガタンと揺れが小さくなり、電車は完全に止まった。わたしたちは、もうここから降りなければならない。それなのに、座席から立ち上がろうとしたら、キャメロンさんに手をつかまれた。
「……勝手ニ勘違イシテ、ドッカ行ッタリスルナヨ」
「うん、どこかへ行ったりしない。キャメロンさんのことが好きだから。こうやって手を繋げたのも、嬉しいな〜」
「ココジャ、アマリ繋ゲナイカラ。……今度ノ休ミ、ドコカ出掛ケヨウカ」
「デート? 楽しみだな〜」
恋愛初心者のわたしに合わせてくれていたなんて、本当にかわいい人。チャラそうなのに、少し不器用で、優しいところがやっぱり好きだ。
「……帰リ、外デコウイウカップル見ツケテモ、絵ヲ描イテナイデ立チ去リナヨ」
「はあい。気をつけます」
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