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「ジャッキー、好きって言って」
「なんですか、いきなり」
お昼休み。休憩室でご飯を食べていた僕を見つけると、ナナシさんはパタパタと聞こえるはずのない足音を立てて、こちらに近づいてきた。ナナシさんはいつも突拍子もないお願いをしてくる。しかも、なんだか嬉しそうだ。
ナナシさんの隣には、フローゼルが立っている。まったく、勝手にボールから出ていったと思ったらナナシさんと遊んでいるなんて。
そんな僕のフローゼルは、少し厚めの紙を何枚かくわえていた。……なんだろう……カードゲーム? よく目を凝らして見ると、番号を振られた短い文章が並んでいた。
「ほら、これ。読んで読んで」
僕にカードを渡すよう、ナナシさんはフローゼルにお願いをした。それに応えて、口にくわえていたものを僕に差し出す。仕方がないので、フローゼルからそれを受け取った。内心ため息をついている僕を気にせず、ナナシさんはニコニコしている。
きっと、ろくなものじゃないだろう。そう思いながらカードを確認すると、本当にろくでもないことしか書かれていなかった。
「……ちょっと、なんですかこれ」
「同じ単語を指定された番号の感情で言うゲームだって! なんか最近、流行ってるみたい。ルールも簡単だから、やってみるといいよって」
「ゲームだったら、他にも単語があるのでは……なんでこれしかないんですか」
「だって、これと数字カードしか渡されてないもん」
ナナシさんが、自分からこのゲームをほしがったとは考えにくい。ボードゲームの存在なんて、ナナシさんは知らないだろうし。僕をからかうために、誰かがこのカードをナナシさんに渡したのだ。
……ラムセスさんか、キャメロンさん。職員の中では、このふたりが怪しい。いや、クダリさんの可能性もある。まあ、誰だろうと腹が立つことに変わりはない。
「僕はやりませんよ」
「えー! でも、このゲームやりたい。やってくれるよね?」
「……だいたい、こういうのは大人数でやるものじゃないですか」
「じゃあ、他に誰か呼ぼうか? 他の人の前でも言ってくれるならね!」
ナナシさんは少し拗ねているようだ。腕を組んで、ないはずの右足をパタパタさせている。その様子を見て、フローゼルがこちらを見てきた。……パートナーは僕のはずなのに、こっちの味方をしてくれないのか。
「ああ、もうわかりました! やればいいんでしょう、やれば」
僕の言葉に、ナナシさんの表情がぱっと明るくなった。本当にわかりやすい。
数字カードをシャッフルして、適当にそれを引いた。そして、出てきた数字カードと番号に書かれたお題を確認して愕然とする。ちらほらと職員がいる休憩室の中で、僕はこれを言わなければならないとは、どんな罰ゲームだ。
「いいですか、いきますよ。まったく、1回しか言いませんからね」
こんなの、何回も言わされてたまるものか。
「……好きです」
ナナシさんとフローゼルは、顔を見合わせるとお題カードを確認した。
「フローゼル、どれかわかった?」
キュウウ……と申し訳なさそうな鳴き声を上げて、ナナシさんを見ている。それから僕の方をちらりと見てきたので、本当はわかっていそうだ。
「んー……わたしも。ねえ、ちゃんと感情込めてやった? やってないよね。ほらほら、もう1回!」
「1回だけって言ったじゃないですか! もうおしまいですよ」
「わたしは1回だけでいいって承認してないもん」
ああ言えばこう言う。こうなったら、僕が折れるまで平行線が続くか、ナナシさんが不機嫌になってノボリさんのシャンデラを連れてくるか。……ついでに、被害者も連れて。
しかし、被害者が出たら絶対に矛先が僕に向くだろう。ということは、実質一択しかない。
「まったく……言えばいいんでしょう、言えば! 本当にこれっきりですからね、今度から変なゲームを持ってこないでくださいよ」
これは、ただのゲーム。深い意味なんてない。僕は、このカードに書かれたお題を演じるだけだ。
「ナナシさん、好きです。……これで十分ですか」
ナナシさんは、お題カードを見ながらニコニコしている。今度はきちんと伝わったようだ。……カードと僕を交互に見ている姿が、少しムカつく。
「アハハ! ジャッキー、顔真っ赤」
「誰のせいですか、誰の」
「さあ? 誰のせいだろうね」
僕が引いたお題は、『好きな相手に言うときの“好き”』。飲み会の席で他の職員相手に言うならまだしも、素面でナナシさん相手なんて、分が悪すぎる。
「……でも、好きって言ってもらえて嬉しかったな!」
ナナシさんは、少しだけ顔を赤くしていた。
自分でこのゲームをやらせたくせに、照れ笑いを浮かべるなんて。……毎回、僕はその笑顔に負けてしまうのだから、ナナシさんは本当にタチが悪い。
「なんですか、いきなり」
お昼休み。休憩室でご飯を食べていた僕を見つけると、ナナシさんはパタパタと聞こえるはずのない足音を立てて、こちらに近づいてきた。ナナシさんはいつも突拍子もないお願いをしてくる。しかも、なんだか嬉しそうだ。
ナナシさんの隣には、フローゼルが立っている。まったく、勝手にボールから出ていったと思ったらナナシさんと遊んでいるなんて。
そんな僕のフローゼルは、少し厚めの紙を何枚かくわえていた。……なんだろう……カードゲーム? よく目を凝らして見ると、番号を振られた短い文章が並んでいた。
「ほら、これ。読んで読んで」
僕にカードを渡すよう、ナナシさんはフローゼルにお願いをした。それに応えて、口にくわえていたものを僕に差し出す。仕方がないので、フローゼルからそれを受け取った。内心ため息をついている僕を気にせず、ナナシさんはニコニコしている。
きっと、ろくなものじゃないだろう。そう思いながらカードを確認すると、本当にろくでもないことしか書かれていなかった。
「……ちょっと、なんですかこれ」
「同じ単語を指定された番号の感情で言うゲームだって! なんか最近、流行ってるみたい。ルールも簡単だから、やってみるといいよって」
「ゲームだったら、他にも単語があるのでは……なんでこれしかないんですか」
「だって、これと数字カードしか渡されてないもん」
ナナシさんが、自分からこのゲームをほしがったとは考えにくい。ボードゲームの存在なんて、ナナシさんは知らないだろうし。僕をからかうために、誰かがこのカードをナナシさんに渡したのだ。
……ラムセスさんか、キャメロンさん。職員の中では、このふたりが怪しい。いや、クダリさんの可能性もある。まあ、誰だろうと腹が立つことに変わりはない。
「僕はやりませんよ」
「えー! でも、このゲームやりたい。やってくれるよね?」
「……だいたい、こういうのは大人数でやるものじゃないですか」
「じゃあ、他に誰か呼ぼうか? 他の人の前でも言ってくれるならね!」
ナナシさんは少し拗ねているようだ。腕を組んで、ないはずの右足をパタパタさせている。その様子を見て、フローゼルがこちらを見てきた。……パートナーは僕のはずなのに、こっちの味方をしてくれないのか。
「ああ、もうわかりました! やればいいんでしょう、やれば」
僕の言葉に、ナナシさんの表情がぱっと明るくなった。本当にわかりやすい。
数字カードをシャッフルして、適当にそれを引いた。そして、出てきた数字カードと番号に書かれたお題を確認して愕然とする。ちらほらと職員がいる休憩室の中で、僕はこれを言わなければならないとは、どんな罰ゲームだ。
「いいですか、いきますよ。まったく、1回しか言いませんからね」
こんなの、何回も言わされてたまるものか。
「……好きです」
ナナシさんとフローゼルは、顔を見合わせるとお題カードを確認した。
「フローゼル、どれかわかった?」
キュウウ……と申し訳なさそうな鳴き声を上げて、ナナシさんを見ている。それから僕の方をちらりと見てきたので、本当はわかっていそうだ。
「んー……わたしも。ねえ、ちゃんと感情込めてやった? やってないよね。ほらほら、もう1回!」
「1回だけって言ったじゃないですか! もうおしまいですよ」
「わたしは1回だけでいいって承認してないもん」
ああ言えばこう言う。こうなったら、僕が折れるまで平行線が続くか、ナナシさんが不機嫌になってノボリさんのシャンデラを連れてくるか。……ついでに、被害者も連れて。
しかし、被害者が出たら絶対に矛先が僕に向くだろう。ということは、実質一択しかない。
「まったく……言えばいいんでしょう、言えば! 本当にこれっきりですからね、今度から変なゲームを持ってこないでくださいよ」
これは、ただのゲーム。深い意味なんてない。僕は、このカードに書かれたお題を演じるだけだ。
「ナナシさん、好きです。……これで十分ですか」
ナナシさんは、お題カードを見ながらニコニコしている。今度はきちんと伝わったようだ。……カードと僕を交互に見ている姿が、少しムカつく。
「アハハ! ジャッキー、顔真っ赤」
「誰のせいですか、誰の」
「さあ? 誰のせいだろうね」
僕が引いたお題は、『好きな相手に言うときの“好き”』。飲み会の席で他の職員相手に言うならまだしも、素面でナナシさん相手なんて、分が悪すぎる。
「……でも、好きって言ってもらえて嬉しかったな!」
ナナシさんは、少しだけ顔を赤くしていた。
自分でこのゲームをやらせたくせに、照れ笑いを浮かべるなんて。……毎回、僕はその笑顔に負けてしまうのだから、ナナシさんは本当にタチが悪い。