本編
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休憩中、ぼーっとしているナナシにカズマサが声をかけた。眠そうというわけでもなく、ただ遠くを見つめていて何を考えているのか不思議に思う。ナナシは時々こうやって上の空になっていることがあるが、まだ仕事に慣れていなくて疲れているのだろうか。当の本人は声をかけられたことに気がつくと、すみません、考え事してました、と言って頬を掻いた。
「ナナシちゃんって、休みの日は何してるの?」
カズマサにとっては貴重な後輩、しかも女性職員ときた。女子がどういった生態をしているのか気になるのだろう。そうやって目を輝かせているカズマサの純粋な質問に、ナナシは少し考えてから口を開いた。
「休日は……晴れているときは公園に行っていることが多いですね」
「公園? 彼氏とデートとか?」
ナナシの答えは意外なものだった。もっと若い女の子らしい、ショッピングや女友達とランチ、彼氏とデートといった答えを想像していたので、公園というワードにカズマサも首を傾げる。
「ああ、そういうわけじゃないんですけど……それにわたし、誰かと付き合ったことないので」
困ったような、少し難しそうな顔をしながら答えるナナシに思わず、へえ、と声を漏らしてしまう。
「なんや意外やな。お前みたいな子なら引き取り手多いやろに」
「引き取り手って……」
ナナシは、ははは、と苦笑いを浮かべた。しかし実際、真面目だけどどこか少し抜けていて、料理も得意だし見た目だって悪くない。それなのに彼氏のひとつも作らないとは、よっぽど理想が高いのか、相手からの好意に気づかないほど鈍感なのか。冗談を真に受けるタイプなので後者は少しありえそうな気もするが。
「彼氏欲しいな、とか思ったりしないの?」
「今は特にないですね。忙しくてそんな間がないというか」
「そうだよねえ、朝から晩まで仕事じゃ。僕も全然出会いがなくて」
「ここの職員でパートナーおるやつ一応いるで」
ほら、あそこに座っているやつ、と言って指を差すと、カズマサは肩を落としながら大きくため息をついた。
「あれは例外中の例外じゃないですか……」
「まあそうやけど。出会いっちゅうのはどこに転がってるかわからんで」
ナナシが入社する前の出来事なので、不思議そうな顔をしている。しかし、カズマサとのやり取りを見て、何か特殊な事情があるのだろうと察したのか再び苦笑いを浮かべた。
「好きなタイプとかいないの?」
「ノーマルタイプが好きです」
「いや、そうじゃなくて! 今の流れ的に、ポケモンのタイプについてじゃないことはわかるでしょ」
古典的な返しに笑ってしまう。ナナシなりのジョークだろうか。
ナナシはまた、少し間を置いてから口を開いた。
「そうですね……子どもが好きな人ですかね」
「結婚願望があるの?」
「うーん……そういうわけじゃないですけど。まあ、将来的にはあるかもしれませんね。あとは、浮気しない人とか」
結婚したいわけでもないのに子どもが好きな人がいいという理由がよくわからない。浮気をしない人、というのも好みのタイプとして答えるには違うだろう。どこか曖昧な答えで、適当に理由を取って付けたように聞こえる。
「なんか、こういうときってだいたい『芸能人の誰々みたいな人』とか『お金持ちな人』とか『甘えさせてくれる人』とか、そういうものが出てくると思ってたんだけど、ナナシちゃんのそれ、付き合う上で大前提のことだよね……」
「それすらできない人もいるので」
「まあ確かにそうだけどさ」
「ナナシは意外と現実主義者なんやな」
「あまり夢見ちゃうと、疲れちゃうじゃないですか」
あはは! と笑うナナシに違和感を覚える。先ほどまでぼーっとしていたのに、急に明るい笑顔を見せた。無理して笑っているようには見えないが、いつもと違う笑い方に不自然さを感じる。あまり深く聞かない方がいいのかもしれない。
「そういうカズマサはどうなんや。好きなタイプとかあるんか?」
「僕は、かわいくって、甘えん坊で、でもちょっといじっぱりな、そんな子がいいです」
「お前、一生彼女できなそうやな」
「そんなー」
机に突っ伏すカズマサを見て、ナナシは再び難しそうな顔をしている。先ほどまでの受け答えの中に何か複雑な悩みがあるのだろうか。しかし、何も言いたくなさそうなので、この話はここで切り上げるとした。
「ナナシちゃんって、休みの日は何してるの?」
カズマサにとっては貴重な後輩、しかも女性職員ときた。女子がどういった生態をしているのか気になるのだろう。そうやって目を輝かせているカズマサの純粋な質問に、ナナシは少し考えてから口を開いた。
「休日は……晴れているときは公園に行っていることが多いですね」
「公園? 彼氏とデートとか?」
ナナシの答えは意外なものだった。もっと若い女の子らしい、ショッピングや女友達とランチ、彼氏とデートといった答えを想像していたので、公園というワードにカズマサも首を傾げる。
「ああ、そういうわけじゃないんですけど……それにわたし、誰かと付き合ったことないので」
困ったような、少し難しそうな顔をしながら答えるナナシに思わず、へえ、と声を漏らしてしまう。
「なんや意外やな。お前みたいな子なら引き取り手多いやろに」
「引き取り手って……」
ナナシは、ははは、と苦笑いを浮かべた。しかし実際、真面目だけどどこか少し抜けていて、料理も得意だし見た目だって悪くない。それなのに彼氏のひとつも作らないとは、よっぽど理想が高いのか、相手からの好意に気づかないほど鈍感なのか。冗談を真に受けるタイプなので後者は少しありえそうな気もするが。
「彼氏欲しいな、とか思ったりしないの?」
「今は特にないですね。忙しくてそんな間がないというか」
「そうだよねえ、朝から晩まで仕事じゃ。僕も全然出会いがなくて」
「ここの職員でパートナーおるやつ一応いるで」
ほら、あそこに座っているやつ、と言って指を差すと、カズマサは肩を落としながら大きくため息をついた。
「あれは例外中の例外じゃないですか……」
「まあそうやけど。出会いっちゅうのはどこに転がってるかわからんで」
ナナシが入社する前の出来事なので、不思議そうな顔をしている。しかし、カズマサとのやり取りを見て、何か特殊な事情があるのだろうと察したのか再び苦笑いを浮かべた。
「好きなタイプとかいないの?」
「ノーマルタイプが好きです」
「いや、そうじゃなくて! 今の流れ的に、ポケモンのタイプについてじゃないことはわかるでしょ」
古典的な返しに笑ってしまう。ナナシなりのジョークだろうか。
ナナシはまた、少し間を置いてから口を開いた。
「そうですね……子どもが好きな人ですかね」
「結婚願望があるの?」
「うーん……そういうわけじゃないですけど。まあ、将来的にはあるかもしれませんね。あとは、浮気しない人とか」
結婚したいわけでもないのに子どもが好きな人がいいという理由がよくわからない。浮気をしない人、というのも好みのタイプとして答えるには違うだろう。どこか曖昧な答えで、適当に理由を取って付けたように聞こえる。
「なんか、こういうときってだいたい『芸能人の誰々みたいな人』とか『お金持ちな人』とか『甘えさせてくれる人』とか、そういうものが出てくると思ってたんだけど、ナナシちゃんのそれ、付き合う上で大前提のことだよね……」
「それすらできない人もいるので」
「まあ確かにそうだけどさ」
「ナナシは意外と現実主義者なんやな」
「あまり夢見ちゃうと、疲れちゃうじゃないですか」
あはは! と笑うナナシに違和感を覚える。先ほどまでぼーっとしていたのに、急に明るい笑顔を見せた。無理して笑っているようには見えないが、いつもと違う笑い方に不自然さを感じる。あまり深く聞かない方がいいのかもしれない。
「そういうカズマサはどうなんや。好きなタイプとかあるんか?」
「僕は、かわいくって、甘えん坊で、でもちょっといじっぱりな、そんな子がいいです」
「お前、一生彼女できなそうやな」
「そんなー」
机に突っ伏すカズマサを見て、ナナシは再び難しそうな顔をしている。先ほどまでの受け答えの中に何か複雑な悩みがあるのだろうか。しかし、何も言いたくなさそうなので、この話はここで切り上げるとした。