本編
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「お、ナナシ絵描いてたんか」
面会に行くとナナシがスケッチブックとにらめっこをしていた。そしてこちらに気がつくと手を止め、にこりと笑った。
「なにかいたの?」
「今描いているのはエネコとエネコロロ。でも、ふたりが来るまでに他にもたくさん描いたよ」
「見てもええか」
ナナシからスケッチブックを受け取るとミノルも横からのぞき込んだ。まだ描いている途中のエネコとエネコロロは花畑の中でのんびりしているようだった。ふんわりとしたタッチで描かれていて、それぞれのイメージに合っている。その前のページに戻ると、マッスグマのイラストが現れた。こちらは先ほどのふんわりとした様子と違い、とても力強いタッチで、スピード感あふれるものだった。他のページにも様々なポケモンのイラストが描かれているが、どれも絵のタッチが違う。ナナシは絵を描くのが得意だと聞いてはいたが、実際に見るのははじめてだったので驚いた。
「はー、ナナシは絵上手いなあ。これ全部色鉛筆で描いたんか?」
「はい。色鉛筆っていろいろな表現できるから楽しいですよ。それに、絵の具とかと違ってゴミもほとんど出ないから後片付けも楽だし」
「それにしたってこんなに描きわけられるもんなんか。ホンマすごいわ」
「えへへ、ありがとございます」
「にしても、えらいたくさん描いたな。昨日の昼過ぎに画材持ってきて今日面会来るまでにこの量って、ちゃんと寝たんか?」
スケッチブックはほぼ半分といっていいくらいイラストで埋め尽くされていた。いくら手が早いと言っても、ここまで細かく描き込んだイラストを短時間で大量に描くのは無理があるだろう。事実、寝たのか質問すると、ははは、と苦笑いしながら頬を掻いた。若干、目を泳がせている。
「きょ、今日はちゃんと寝ますんで」
「全く、寝ないで描いてたんか。眠れなくても横になって休まなあかんで」
「すみません……でも熱中しちゃうと時間過ぎるの忘れちゃって」
「言い訳無用や」
軽く額を指で弾くとナナシは小さく悲鳴を上げて額を押さえた。それから不満げに舌を出している。
「ママとおねーちゃんが住んでたところのポケモンいっぱい」
「うん。ホウエン地方のポケモン描いてたんだ」
スケッチブックをぱらぱらとめくっているミノルがナナシの描いていたイラストの共通点を見つけた。よくわかったね、とナナシに褒められたミノルは嬉しそうにしている。言われてみれば確かにそうだ。エネコにエネコロロ、それからマッスグマ。ナナシの手持ちのパッチールとボーマンダは言わずもがなホウエン地方に出現するポケモン。ここ2年ほどでイッシュ地方のポケモンの生態系が変わったが、それでもその地方にしか出現しないポケモンはまだたくさんいる。ナナシのスケッチブックには、それらのポケモンが多く描かれていた。
「そうか、ナナシはホウエン出身なんか。パッチールがぎょうさんおるところって言っとったもんな」
「はい。ホウエンは暖かくていいところですよ。まあ、わたしが住んでたところは灰だらけな田舎でしたけどね、昨日の夢を思い出したらなんだか懐かしくなっちゃって。こっちに引っ越してきたのは姉さんが結婚したときだから……7年前まで向こうに住んでました」
「ホウエンは行ったことないなあ。わしはジョウト出身やから、せいぜいカントー止まりや」
ホウエン地方は海を象徴するポケモンと陸を象徴するポケモンの神話が残されていると聞いたことがある。緑や水が豊かで温暖な気候の地方とは行ってみたいものだ。
「えへへ、今度一緒に行きます? イッシュからだと遠いけど、おすすめの場所いっぱいあるから紹介しますよ」
「お前の方からそんな誘いするなんて珍しいな」
「いいところがたくさんあるから、雑誌とかじゃなくて実際に見てもらいたいなって思って」
温泉とか、伝説のポケモンが眠ると言われる洞窟とか、たまにしか見ることのできない幻の島があるんですよ、あと、わたしが住んでたところの近くにある洞窟には隕石が眠ってるんです、ホウエンは石に関係する言い伝えが多いんですよ、そういえば七夕なんかもホウエンの風習なんです、クラウド先輩、ちゃんと七夕の日にお願いしました? とナナシは勢いよく話し始めた。
「ぼくもホウエンちほう行ってみたい!」
「よし、ナナシが元気になったら案内してもらおか」
「え、本当にいいんですか? 半分冗談で言ったんですけど、本気でガイドしちゃいますよ?」
驚いて目を大きく開いているが、とても嬉しそうな表情をしている。
「おう、わしもホウエンに行ってみたいからな。だから早よ元気になれるよう、先生の言うことをちゃんと聞かなあかんで」
「う、善処します」
冗談交じりに注意をすると痛いところを突かれたような顔を見せたが、それでももうすでにホウエン地方への旅行を楽しみにしているようだ。コンテストバトル、不思議な遺跡、お宝が眠っていそうな沈没船、子どもの頃によく作った秘密基地。いろいろな言葉がナナシの口からぽんぽんと紡ぎ出される。ナナシの生まれ故郷を、こちらも早く見てみたいと楽しみに思う。
面会に行くとナナシがスケッチブックとにらめっこをしていた。そしてこちらに気がつくと手を止め、にこりと笑った。
「なにかいたの?」
「今描いているのはエネコとエネコロロ。でも、ふたりが来るまでに他にもたくさん描いたよ」
「見てもええか」
ナナシからスケッチブックを受け取るとミノルも横からのぞき込んだ。まだ描いている途中のエネコとエネコロロは花畑の中でのんびりしているようだった。ふんわりとしたタッチで描かれていて、それぞれのイメージに合っている。その前のページに戻ると、マッスグマのイラストが現れた。こちらは先ほどのふんわりとした様子と違い、とても力強いタッチで、スピード感あふれるものだった。他のページにも様々なポケモンのイラストが描かれているが、どれも絵のタッチが違う。ナナシは絵を描くのが得意だと聞いてはいたが、実際に見るのははじめてだったので驚いた。
「はー、ナナシは絵上手いなあ。これ全部色鉛筆で描いたんか?」
「はい。色鉛筆っていろいろな表現できるから楽しいですよ。それに、絵の具とかと違ってゴミもほとんど出ないから後片付けも楽だし」
「それにしたってこんなに描きわけられるもんなんか。ホンマすごいわ」
「えへへ、ありがとございます」
「にしても、えらいたくさん描いたな。昨日の昼過ぎに画材持ってきて今日面会来るまでにこの量って、ちゃんと寝たんか?」
スケッチブックはほぼ半分といっていいくらいイラストで埋め尽くされていた。いくら手が早いと言っても、ここまで細かく描き込んだイラストを短時間で大量に描くのは無理があるだろう。事実、寝たのか質問すると、ははは、と苦笑いしながら頬を掻いた。若干、目を泳がせている。
「きょ、今日はちゃんと寝ますんで」
「全く、寝ないで描いてたんか。眠れなくても横になって休まなあかんで」
「すみません……でも熱中しちゃうと時間過ぎるの忘れちゃって」
「言い訳無用や」
軽く額を指で弾くとナナシは小さく悲鳴を上げて額を押さえた。それから不満げに舌を出している。
「ママとおねーちゃんが住んでたところのポケモンいっぱい」
「うん。ホウエン地方のポケモン描いてたんだ」
スケッチブックをぱらぱらとめくっているミノルがナナシの描いていたイラストの共通点を見つけた。よくわかったね、とナナシに褒められたミノルは嬉しそうにしている。言われてみれば確かにそうだ。エネコにエネコロロ、それからマッスグマ。ナナシの手持ちのパッチールとボーマンダは言わずもがなホウエン地方に出現するポケモン。ここ2年ほどでイッシュ地方のポケモンの生態系が変わったが、それでもその地方にしか出現しないポケモンはまだたくさんいる。ナナシのスケッチブックには、それらのポケモンが多く描かれていた。
「そうか、ナナシはホウエン出身なんか。パッチールがぎょうさんおるところって言っとったもんな」
「はい。ホウエンは暖かくていいところですよ。まあ、わたしが住んでたところは灰だらけな田舎でしたけどね、昨日の夢を思い出したらなんだか懐かしくなっちゃって。こっちに引っ越してきたのは姉さんが結婚したときだから……7年前まで向こうに住んでました」
「ホウエンは行ったことないなあ。わしはジョウト出身やから、せいぜいカントー止まりや」
ホウエン地方は海を象徴するポケモンと陸を象徴するポケモンの神話が残されていると聞いたことがある。緑や水が豊かで温暖な気候の地方とは行ってみたいものだ。
「えへへ、今度一緒に行きます? イッシュからだと遠いけど、おすすめの場所いっぱいあるから紹介しますよ」
「お前の方からそんな誘いするなんて珍しいな」
「いいところがたくさんあるから、雑誌とかじゃなくて実際に見てもらいたいなって思って」
温泉とか、伝説のポケモンが眠ると言われる洞窟とか、たまにしか見ることのできない幻の島があるんですよ、あと、わたしが住んでたところの近くにある洞窟には隕石が眠ってるんです、ホウエンは石に関係する言い伝えが多いんですよ、そういえば七夕なんかもホウエンの風習なんです、クラウド先輩、ちゃんと七夕の日にお願いしました? とナナシは勢いよく話し始めた。
「ぼくもホウエンちほう行ってみたい!」
「よし、ナナシが元気になったら案内してもらおか」
「え、本当にいいんですか? 半分冗談で言ったんですけど、本気でガイドしちゃいますよ?」
驚いて目を大きく開いているが、とても嬉しそうな表情をしている。
「おう、わしもホウエンに行ってみたいからな。だから早よ元気になれるよう、先生の言うことをちゃんと聞かなあかんで」
「う、善処します」
冗談交じりに注意をすると痛いところを突かれたような顔を見せたが、それでももうすでにホウエン地方への旅行を楽しみにしているようだ。コンテストバトル、不思議な遺跡、お宝が眠っていそうな沈没船、子どもの頃によく作った秘密基地。いろいろな言葉がナナシの口からぽんぽんと紡ぎ出される。ナナシの生まれ故郷を、こちらも早く見てみたいと楽しみに思う。